インプラント治療は、むし歯などで歯を失った方や先天的に歯がない方が受ける治療で、顎の骨にチタンやチタン合金でできた人工歯根を埋め込む手術です。
インプラント治療は、顎の骨にインプラント体を埋め込む手術であるため、術後のダウンタイムの痛みが心配な方もいるでしょう。
また、天然の歯よりも感染に弱いといわれているため、感染による腫れなどが不安な方もいるのではないでしょうか。
そこで、本記事ではインプラント治療に伴うダウンタイムの症状や対処法について解説します。
インプラント治療に伴うダウンタイムに起こりうる症状
インプラント治療は、麻酔を用いた外科手術であるため、ダウンタイムの症状が気になる方も少なくないでしょう。
すべての治療を終えた後でも、インプラントの施術部分が炎症を起こしたり、部品が緩んだりなどさまざまなトラブルが生じうるため油断は禁物です。
インプラント治療のダウンタイムに生じる症状は人によってさまざまで、手術にかかった時間や規模、範囲によっても異なります。
痛み・腫れ
インプラント治療は、外科的手術を行うため痛みや腫れが生じる可能性は十分にあり、麻酔が切れたら強い痛みを感じることがほとんどだといわれています。
痛みや腫れは歯茎の切開具合や手術時間、出血量などによって異なりますが、痛みは5日程度で治まるでしょう。
腫れの場合は、2〜3日後にピークがあり1〜2週間程度で次第に治っていきます。
しかし、痛みや腫れが長引く場合は担当の歯科医師に相談するようにしましょう。
出血
インプラント治療後、出血が起こることがありますが、1〜2日で出血は止まるといわれています。
手術部位からの出血は想像が付くかもしれませんが、実は鼻血が止まらないときもインプラント治療が原因となっている可能性があります。
また、過去に行った治療によって出血するケースもあるため、今回のインプラント治療が原因とは限らない可能性があることにも注意が必要です。
特に、インプラント治療の前に骨造成を行った場合は通常より出血量が多くなり、内出血を起こすことがあります。
その他の身体症状
インプラント治療のその他の症状として、主に以下の3つが挙げられます。
- 膿が出る
- 下唇が震える
- よだれが大量に出る
このような3つの症状以外にも、湿疹や下痢などの症状が出る可能性もあるといわれているため、体の異変にも気を配るようにしましょう。
また、インプラント治療後のトラブルとして、以下の異常にも注意しましょう。
- インプラント周囲炎
- 金属アレルギー
- 噛み合わせの悪化
- 上顎洞粘膜の炎症
- 神経麻痺
これらは、必ずしも発症のリスクを防げるわけではないため、少しでも気になることがあれば担当の歯科医師に確認するようにしましょう。
インプラントのダウンタイムはいつまで続く?
歯茎を切開して顎の骨を削る外科的手術であるため、インプラント治療後およそ1週間がダウンタイムといわれています。
1週間程で痛みは治まりますが、腫れは2週間続くこともありうるため、鎮痛剤も服用しながら回復を待ちましょう。
顔の腫れや内出血を伴う青あざが生じることがありますが、これは治療後によく起こる症状だといわれているため過度な心配はあまり必要ありません。
2週間以降も痛みや腫れが続く場合は、歯科医師に相談をしましょう。
インプラント治療の術後に起きる痛み・腫れの対処法
インプラント治療の術後に起きる痛みと腫れの対処法を把握しておくと、インプラント治療で生じるトラブルを予防できるでしょう。
絶対にダメというわけではありませんが、仕事や外出の予定などがある方は可能な限りは身体をゆっくりと休めることも大切です。
特に手術当日に無理な運動を行うと、手術の成功率を下げる要因となってしまうため重労働はなるべく避けるようにしましょう。
ここでは、その他の痛みと腫れの対処法を紹介します。
処方された薬を指示どおりに服用する
インプラント治療の終了後には鎮痛剤と抗菌剤が処方されます。
手術後は麻酔が効いているため、痛みを感じないかもしれませんが、痛みが出てから鎮痛剤を服用しても効果を感じにくいでしょう。
そのため、痛みが出る前からあらかじめ服用しておくようにしましょう。
また、抗菌剤は必ず指示どおりに最後まで飲み切るようにすることが重要です。
決められた用法や用量を守って飲み切れば、痛みや腫れが治るケースがほとんどだといわれているため、歯科医師の指示に従いましょう。
安静にする
仕事など忙しいタイミングもあるかもしれませんが、インプラント治療後は、できる限り安静にすることが重要です。
特に、手術当日は極力仕事もお休みを取り、家で安静に過ごせるようにしておきましょう。
家事などの軽作業は問題ないといわれていますが、体力を大きく消耗するような動きは控えるようにすることが大切です。
身体に疲労が溜まっている状態では、手術部位の治りも悪くなってしまいますので、身体を休めることに専念しましょう。
適度に冷やす
インプラント治療後に痛みや腫れが生じた場合は、患部を適度に冷やすことも対処法の1つです。
患部を冷やすときは、痛みがひどくなる可能性があるため、氷や保冷剤を直接頬に当てないように注意しましょう。
患部を直接冷やす行為は、インプラントが骨に結合しづらくなるため、氷や保冷剤はタオルで覆って過度に冷やしすぎないようにすることが大切です。
インプラント治療後から2日が経過しても痛みや腫れが落ち着かないときは、それ以上冷やしても効果は期待できないため、中断するようにしましょう。
インプラント治療に伴うダウンタイムの症状を軽減する術後の過ごし方
インプラント治療を終了して帰宅した後の生活にも注意が必要です。
手術部位を指や舌でむやみやたらに触ったり、頬に刺激を加えたりすると傷ができてしまい、細菌感染を引き起こすリスクがあります。
術後には、鎮痛剤や抗菌剤などを歯科医院から処方されるため、用法や用量をきちんと守って服用しましょう。
特に抗菌剤は、自己判断で飲まなかったり飲み忘れてしまったりすると、殺菌効果が薄まってしまうため必ず服用をしましょう。
十分に止血する
手術直後は止血をしてもらいますが、時間が経過するとともに血が滲んできてしまうことがあります。
インプラント治療の止血は歯科医師による縫合と患者さん本人による圧迫止血が基本です。
このような場合には、清潔なガーゼを施術部位で噛んで十分に止血するようにしましょう。
数分ごとに適宜ガーゼを交換して、ガーゼを10〜15分噛んでいても出血が治らないときは、担当の歯科医師に相談することが大切です。
当日に寝ている間、枕やベッドのシーツが血で汚れてしまう可能性があるため、汚れてもよいタオルなどを下に敷くようにするとよいでしょう。
飲食物に気を付ける
インプラント治療のダウンタイムでは、飲食物に注意するようにしましょう。
特に手術当日の麻酔が効いているときは、口元の感覚がなく、熱いものや刺激物で炎症を起こしたとしても気付きにくいため注意が必要です。
また、食事の際に誤って頬の内側の肉や舌を噛んでしまうこともあるため、食べるときは落ち着いて咀嚼をするようにしましょう。
咀嚼の際には、出血や痛みを悪化させないように、手術をした部分とは反対側の歯で噛むようにすると術後のリスクを抑えることができます。
空腹時は、おかゆのようなやわらかくて極力咀嚼の必要性がないものを食べるようにすることが大切です。
飲酒・喫煙はしない
インプラント治療後は、飲酒や喫煙はしないようにしましょう。
飲酒をすると血液の巡りがよくなってしまい、出血の原因となってしまうため、術後は1日控えるようにしましょう。
また、喫煙は傷の治りを抑制してしまうため、インプラントと骨をくっつきにくくしてしまいます。
インプラントを入れた後も喫煙を続けていると、インプラント周囲炎を発症してしまい、インプラントを失ってしまう可能性もあります。
非喫煙者に比べて、喫煙者はインプラント治療の失敗率が約2倍になってしまうというデータがあるため注意が必要です。
タバコに含まれるニコチンは、免疫力を低下させてインプラントの土台結合を阻害してしまうため、インプラント治療の失敗を避けたい方は喫煙を控えるようにしましょう。
術後すぐの入浴・運動は極力控える
入浴や運動は血液の巡りを促進してしまい、出血や腫れをひどくしてしまうため、術後すぐは入浴や運動を極力控えるようにしましょう。
入浴は、術後から2〜3日は控えて、できる限りシャワーで済ませるようにしましょう。
同時に、たとえシャワーでも体を温めすぎると腫れがひどくなってしまったり傷口からの出血が悪化してしまったりすることがあるため、ぬるめの温度で済ますことが推奨されます。
ただし、インプラントの傷の状態によっては、入浴を控えた方がよい期間が延びてしまう恐れがあるため歯科医師に相談することが大切です。
また、激しい運動をする場合は、インプラントの施術部位にトラブルが生じやすくなるため1週間は避けるよう注意が必要です。
インプラント治療のダウンタイム後に取り入れたいケア方法
インプラント治療のダウンタイム後に、日常的に行うとよいケア方法がいくつかあり、例としてうがい薬の使用やメンテナンスなどが挙げられます。
インプラント治療は術後7〜10日に抜糸を行い、抜糸が終わると手術部位も歯磨きできるようになります。
歯磨きをする代わりにうがい薬を使用して、口内環境を清潔に保ちましょう。
ただし、強いうがいをしてしまうと出血の原因になってしまうため、
優しく行うことが肝心です。
また、手術部位以外は歯磨きが可能なため、優しく磨いて口内を清潔にしましょう。
インプラント治療後は長持ちさせるために1年に2〜4回程度、定期的に検査とメンテナンスを行う必要があります。
インプラント手術をした人が罹患しやすい歯周病など異変の早期発見をするためにもメンテナンスはきちんと受けるようにしましょう。
その他にも、インプラント治療後のケア方法は多くあり、そのうちの3つを紹介します。
治療後の過ごし方によって、抑えられるリスクの量に影響があるため、念入りに確認をするようにしましょう。
鎮痛剤で痛みをコントロールする
インプラント治療による痛みは、鎮痛剤でコントロールできることがほとんどだといわれています。
その際は用法や用量を守らなければ、痛みや腫れが余計に悪化してしまう恐れがあるため、指示どおりに服用することが大切です。
ただし、服用する量を増やしても鎮痛剤が効かない程痛みが強いときや、服用後に異変が生じたときは薬が合っていない可能性があるため歯科医師の指示を仰ぎましょう。
また、手術から数日経過した後からは鎮痛剤の服用は痛みが生じたときのみでよいとされていますが、それまでは担当の歯科医師の指示どおりに服用しておきましょう。
抗菌剤は最後まで飲み切る
インプラント治療後は抗菌剤を処方されるため、歯科医師の指示どおり必ず服用するようにしましょう。
抗菌剤は、自分の判断で勝手に途中で飲むのをやめたり飲み忘れてしまったりすると大変危険です。
抗菌剤は途中で飲まなくなると、細菌が薬に対して耐性を持ってしまう恐れがあります。
そのため、抗菌剤は必ず最後まで飲み切ることが肝心です。
毛先のやわらかい歯ブラシを使う
インプラント治療後は、インプラント周囲粘膜炎やインプラント周囲炎といった症状を防ぐためにしっかりと歯を磨かなくてはなりません。
しかし、治療後は歯肉の傷口がまだふさがっていないため、少しの刺激や細菌によって炎症が起こってしまう可能性があります。
そのため、歯磨きの際は手術部位に触れないようにするのはもちろんですが、毛先がやわらかい歯ブラシを使って傷口にできる限り刺激を与えないようにしましょう。
インプラント治療のダウンタイムが長引く場合は歯科医師に相談しよう
インプラント治療で痛みや腫れがひどくなったり、異変を感じたりした際は歯科医師に相談することが大切です。
どれだけ丁寧に歯磨きを行ったとしても、残念なことにインプラント周囲粘膜炎やインプラント周囲炎のリスクを完全になくすことはできません。
そのため、治療後も定期的に体に気を配り、必要に応じてメンテナンスを受ける必要があります。
メンテナンスでは治療部位を確認するだけでなく、歯科器具を用いて歯の掃除をしてもらえるため、歯磨きでは除去しきれなかった部分をきれいにしてもらえます。
まとめ
インプラント治療は、手術に対する怖さを感じる人もいるかもしれませんが、実は治療後のダウンタイムでも自身の健康状態を常に気にしておく必要があります。
インプラント治療は、治療が終了した後でもインプラント周囲炎や金属アレルギー、噛み合わせの悪化などさまざまな影響が及んでしまうリスクがあります。
治療のダウンタイムの負担を少しでも軽くするために、飲食物に気をつけることや、抗菌剤をしっかりと最後まで飲み切ることが肝心です。
ほかにも、うがい薬を使用して口内環境を整えることや、毛先のやわらかい歯ブラシでなるべく刺激を与えないことで清潔な状態を保てるようにしましょう。
参考文献