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インプラントのXガイドとは?Xガイドを用いた治療の流れや使用するメリット、デメリットを解説

インプラントのXガイドとは?Xガイドを用いた治療の流れや使用するメリット、デメリットを解説

インプラント治療には、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込むという外科手術が必須であるため、安全性が重要となります。そのためインプラントの分野は、各社が開発に力を入れており、新しい技術も年々増えています。そのなかでも注目を集めているのがXガイドです。インプラント手術の安全性を高められるナビゲーションシステムで、従来法にはないメリットがたくさんあります。ここではXガイドの特徴や治療の流れ、メリット・デメリットを解説します。

インプラント手術のXガイドとは

インプラント手術のXガイドとは インプラント手術で使われるXガイドの基本事項を確認しておきましょう。

インプラント手術で使われるナビゲーションシステム

Xガイドとは、インプラント手術で人工歯根を埋め込む位置や角度、深さなどを精密にナビゲーションしてくれるシステムです。手術前に顎の骨のCT撮影を行い、その情報を専用のソフトに入力して診断・分析・治療のシミュレーションを実施します。人工歯根を埋め込む際には、GPS測定でナビゲーションが行われるため、術者はその誘導に沿って人工歯根を埋入できることから、インプラント手術に伴うさまざまなトラブルを回避しやすくなるのです。

それだけを聞くと斬新に思えるかもしれませんが、こうしたナビゲーションシステムは数十年前から脳神経外科の分野で普及しており、安全性はすでに確立されています。Xガイドはインプラント手術に特化したナビゲーションシステムであり、脳神経外科の手術で用いられているものとは少し異なりますが、もうすでに世界数十カ国で導入されている点を踏まえると、信頼性は高いといえるでしょう。

サージカルガイドとの違い

人工歯根の埋入位置・角度・深さなどを誘導する方法は、サージカルガイドがすでに普及しています。患者さん専用のマウスピースを作成して、手術時に装着することで人工歯根を正しい位置に埋め込みやすくなります。サージカルガイドを作成する際にもCT撮影や専用のソフトを用いたシミュレーションなどが行われるため、Xガイドと大差がないように感じられます。しかし、サージカルガイドの作成は、いくつものステップを踏むなかで少しずつ誤差が積み重なっていくことから、マウスピースができあがる頃には、大きな誤差へと広がり、人工歯根を誤った位置に埋め込んでしまうリスクを伴います。これは手作業で調整などを加えるサージカルガイドの弱点ともいえます。

一方、Xガイドは、CT撮影から手術の段階に至るまで、人の手による調整などは加わらず、手術中もGPS測定をリアルタイムに活用できるため、誤差が生じるリスクを限りなくゼロに近づけられるのです。これがサージカルガイドとの大きな違いです。

それに加えてXガイドでは、サージカルガイドのマウスピースのような現物を作るプロセスがなく、工程のほぼすべてをコンピューター上で行うことができ、治療期間を短縮できる点にも大きな違いが見られます。

Xガイドを使用したインプラント治療の流れ

Xガイドを使用したインプラント治療の流れ Xガイドを使用したインプラント治療の流れを解説します。

初診・検査

Xガイドを用いたインプラント治療でも、従来法と同じように初診・検査という流れから入ります

Xガイドは馴染みが薄いため、初診やカウンセリングの際に疑問や不安を解消しましょう。治療前の検査は通常どおり行われます。口腔内診査、レントゲン撮影、口腔内写真撮影などを実施して、診断や治療計画の立案に必要な情報を集めます。

CTスキャン

Xガイドによるインプラント治療では、事前検査のCTスキャンが不可欠です。立体的な画像情報から、患者さんの骨の厚みや幅、奥行きだけでなく、周囲の血管や神経の位置まで正確に把握します。

Xガイドによるコンピュータシミュレーション

CTデータを専用のソフトに取り込み、デジタルでシミュレーションをします。その結果をもとに診断して治療計画を立案します。ここまでの流れもサージカルガイドを用いたインプラント治療と大差はないといえるでしょう。

ガイドを用いたインプラント埋入手術

患者さんが治療計画および治療方針に同意したら、インプラントの埋入手術を行います。この方法では、サージカルテンプレートを装着する必要がないため、埋入手術をスムーズに始められます。

また、インプラント体の埋入処置はXガイドのナビゲーションシステムによってリアルタイムで誘導されることから、従来法よりも手術が早く終わる傾向にあります。

補綴物の装着

インプラント体の埋入およびアバットメントの装着が完了したら、補綴物の装着へと移ります。上部構造(被せ物)は歯型を取り技工所で作ります。インプラント治療における被せ物は、一般的にセラミックで作られます。補綴物が完成したらアバットメントに装着し、調整を加えて治療は終了です。

定期的なメンテナンス

Xガイドを用いたインプラント治療が終了したあとも従来法と同じようにメンテナンスを受ける必要があります。3〜6ヶ月に1回は歯科医院でのメンテナンスを受けて、上部構造やアバットメント、インプラント体の状態をチェックしましょう。定期的なメンテナンスでは、インプラントのクリーニングや歯磨き指導を行います。

Xガイドを用いたインプラント治療が向いている方とは

Xガイドを用いたインプラント治療が向いている方とは ここまでの解説でXガイドへの理解が深まり、治療を検討している方もいるでしょう。Xガイドの負の側面についてはまだ触れていないので、不安な点もあると思いますが、まずはどのような方がXガイドを用いたインプラント治療に向いているのかを簡単に説明します。

◎インプラント手術の失敗が怖い方

失った歯の治療法には、ブリッジ・入れ歯・インプラントといった3つの選択肢が用意されています。ブリッジと入れ歯は、外科手術を行う必要がなく、短期間で終わる方法なので、治療自体が失敗するリスクは低いです。失敗したとしても、身体に深刻な症状をもたらしたり、再治療が困難になったりすることは少ないでしょう。

一方、インプラント治療には顎の骨に人工歯根を埋め込むという外科処置を伴うことから、さまざまな失敗の可能性があります。例えば、手術中に重要な血管や神経を損傷することもあれば、人工歯根を適切な位置に埋め込めないということもありえます。それだけにインプラント治療に関しては失敗が怖いという方も少なくないでしょう。

サージカルガイドを用いたインプラント治療でもこうした失敗のリスクは低減できますが、Xガイドを活用することで、そのリスクをさらに低くすることが可能となります。インプラント手術の失敗をできるだけ回避したいという方には、Xガイドが向いているといえるのです。

◎手術後の腫れや痛みを抑えたい方

インプラント手術後には、痛みや腫れが起こります。これは外科手術を伴う治療である以上、避けることはできませんが、Xガイドを用いたインプラント手術であれば術後の腫れや痛みを従来法より抑制しやすくなります。

◎サージカルガイドの適応が難しい方

サージカルガイドもインプラント治療の安全性を高めるうえで有用な方法ですが、サージカルテンプレートというマウスピース型の装置を装着しなければならないことから、適応が難しいケースもあります。

具体的には、もともとの開口量が少なかったり、顎関節症の影響でお口を大きく開けにくかったりするケースは、サージカルガイドの適応外となりえます。サージカルテンプレートのような口腔内に設置する大型の装置を使用しないXガイドなら、こうした症状を抱えた患者さんでも問題なく、先進の医療技術を活用できます。

インプラント手術でXガイドを使用するメリット

インプラント手術でXガイドを使用するメリット インプラント手術にXガイドを使用することで、どのようなメリットが得られるのかを解説します。

インプラント手術の正確性や安全性の向上

インプラント治療にXガイドを使用するメリットは、手術の正確性や安全性が向上する点です。インプラント手術では、肉眼では確認できない顎骨にチタン製の人工歯根を埋め込むため、基本的には盲目的な処置となります。

事前に歯科用CTによる精密検査を行っているとはいえ、実際の手術で目に見えているのは顎の骨の表面だけなのです。その内部には、神経や血管が走り、インプラント体を埋め込む部位によっては上顎洞という空洞も存在しており、術者の手元が狂ったり、目測を誤ったりしたら深刻なトラブルを引き起こしかねません。

Xガイドなら手術中もGPS測定で血管や神経の位置、インプラント体を埋め込む適切な角度、深さなどが3D画像で表示されることから、インプラント手術の正確性や安全性を向上させることが可能です。

インプラント手術の時間短縮

Xガイドによるインプラント治療では、サージカルガイドを用いた場合よりも、治療機関と手術時間の短縮まで見込めます。Xガイドによるインプラント手術では、サージカルガイドを装着したり、微調整を加えたりする時間を省くことができるからです。

Xガイドなら、患者さんの顎の骨の状態やインプラント体を埋め込む適切な位置をリアルタイムで確認しながら処置を進められるため、速やかな手術が可能となり、手術時間も自ずと短くなります。

お口が開きにくい方も手術が受けやすい

もともとお口が小さい。顎関節症による影響でお口を大きく開けられない。そのような症状があっても、サージカルテンプレートを使用しないXガイドなら、問題なくインプラント手術を行えます。

患者さんのお口や顎にかかる負担も軽減できることでしょう。サージカルテンプレートによって術野が狭くなることは、術者にとってもデメリットとなるため、マウスピース型の装置を使用しないXガイドは術者にもメリットが大きい方法といえます。

インプラント手術でXガイドを使用するデメリット

インプラント手術でXガイドを使用するデメリット Xガイドを用いたインプラント手術のデメリットについて解説します。ここまでの解説では、主にXガイドのメリットが掘り下げられてきましたが、この方法も決して万能ではなく、いくつかのデメリットを伴います。そのためインプラント手術でXガイドの使用を検討中の方は、必ずデメリットについても正しく理解しておく必要があります。

治療費用が高くなりやすい

インプラント手術でXガイドを使用するためには、専用の医療機器や器具が必要です。Xガイドによるインプラント手術のトレーニングを受けた歯科医師が執刀する必要があることから、通常のインプラント治療よりも費用が高くなりやすいです。インプラント治療自体が保険適用外なので、どのくらいの費用になるかは歯科医院によって大きく異なります。

歯科医師の技術や経験に左右される

Xガイドによるインプラント手術は、通常のインプラント手術とは大きく異なります。そのため、知識や技術がない歯科医師がXガイドによるインプラント手術を行うことは難しいです。知識があったとしても、歯科医師の技術や経験によってインプラント手術の精度は変わることから、歯科医院選びは慎重に行わなければなりません。

Xガイドを導入している歯科医院が少ない

インプラント治療に対応している歯科医院は少なくありませんが、Xガイドを導入しているところは現状ほとんどありません。これはXガイドを導入するために多額の設備投資が必要となるだけでなく、人材の育成にも相応の時間とお金がかかるからです。実際、地元地域でXガイドを導入している歯科医院は1〜2軒程度であることがほとんどでしょう。歯科医院の選択肢が狭められるという点は、患者さんにとって大きなデメリットとなります。

まとめ

今回は、Xガイドの特徴、流れ、メリット・デメリットをまとめました。インプラント手術のナビゲーションシステムであるXガイドは、人工歯根を埋め込む手術の安全性を向上させ、治療期間と手術時間の短縮につながることから、患者さんは大きなメリットを享受できます。その反面、費用が高くなりやすい、歯科医師の技術や経験に左右される、Xガイドを導入している歯科医院が少ないなどのデメリットも伴うことから、治療法の選択の際には慎重に検討する必要があります。インプラントのXガイドについてさらに詳しく知りたいという方は、この方法を導入している歯科医院に問い合わせましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

松浦 明歯科医師(医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック)

出身大学:福岡歯科大学 / 経歴:1989年福岡歯科大学 卒業 1991年松浦明歯科医院 開院 2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任 / 資格:厚生労働省認定研修指導医 日本口腔インプラント学会認定医 ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医 / 所属学会:ICOI(国際口腔インプラント学会) 日本口腔インプラント学会 日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事 日本顎咬合学会 会員 日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

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