インプラントは、顎の骨にチタン製の人工歯根を埋め込む治療法で、天然歯のようにしっかり噛めて、見た目も自然な点が魅力の治療方法です。従来の装置と比べると寿命も長いですが、インプラントが欠ける可能性も十分あるため注意が必要です。ここではそんなインプラントが欠ける原因や破損した時の対処法を詳しく解説します。インプラント治療を検討中で欠けるリスクが不安という人は、参考にしてみてください。
インプラントについて
はじめに、インプラントの構造と破損するリスクについて解説します。
- インプラントの構造について教えてください
- インプラントの構造は、主に3つの部分から成り立っています。まず、インプラントの本体であるフィクスチャー(人工歯根)はチタンで作られ、顎の骨に埋め込まれます。次に、インプラント体と上部構造を繋ぐアバットメントがあります。これは、インプラント体と人工歯を連結するための重要な部品です。そして最後に、上部構造としての人工歯があります。これが、実際に見える部分であり、患者さんが使用する歯の役割を果たします。
- インプラントは一度装着すれば壊れませんか?
- 壊れることがあります。不適切な力が加わったり、手術後のケアやメンテナンスが不十分だったりすると、インプラントや周りの組織に異常が生じて、装置の破損を招くことがあります。具体的には、上部構造が欠ける、アバットメントの破損やゆるみ、インプラント体の破損や脱落といったトラブルが考えられます。
インプラントが欠けたり破損したりする原因
- インプラントの上部構造が破損する原因は何ですか?
- インプラントの上部構造が破損する主な原因は、以下の3つです。
◎外傷による強い衝撃
インプラントの上部構造が破損する主な原因の一つは、事故などによる強い衝撃です。交通事故やスポーツ中の衝撃が直接インプラントに加わると、人工歯が欠けたり破損したりすることがあります。特に、口元に直接衝撃が加わった場合、その衝撃がインプラント全体に伝わり、上部構造が破損するリスクが高まります。そのためスポーツ時にはマウスガードを着用するなどの予防策が必要となります。
◎噛み合わせの変化
噛み合わせの変化もインプラントの上部構造が破損する原因となります。歯の位置が変わることで、上部構造に過度な負担がかかり、破損を招きます。これは、隣接する歯の移動や噛み合わせのずれが原因となり、インプラントに不均等な力が加わるためです。
◎歯ぎしりなどの悪習癖
歯ぎしりや食いしばりといった悪習癖も、インプラントの上部構造に大きな影響を与えます。これらの習癖は、夜間に無意識のうちに行われることが多く、上部構造に大きなダメージを与えることがあります。その結果、上部構造が摩耗したり、ひび割れたりするのです。患者さんは、歯ぎしり防止のためのナイトガードを使用することが推奨され、これにより上部構造の破損リスクを軽減することができます。
- インプラントのアバットメントが破損する原因は何ですか?
- アバットメントが破損する原因も基本的には上部構造と同じです。まず、インプラントに強い衝撃が加わることで、アバットメントが破損することがあります。交通事故やスポーツ中の事故が典型的な例です。
次に、噛み合わせの変化が影響を与えることがあります。歯の位置や形が変わることで、アバットメントに不均等な力がかかり、徐々に緩んだり、破損したりすることがあります。 歯ぎしりや食いしばりといった悪習癖も影響を与えます。これらの力がアバットメントに蓄積し、最終的に破損を招くことがあります。その他、インプラント周囲炎を患ってインプラントが不安定となることでも、アバットメントの破損につながる場合があります。
- インプラント体が破損してしまう原因を教えてください
- インプラント体が破損する原因は多岐にわたります。まず、インプラントに強い衝撃が加わること、噛み合わせが変化すること、歯ぎしりや食いしばりによる影響は、上部構造やアバットメントが破損する原因と共通しています。それに加えて、インプラントの経年的な劣化やインプラント周囲炎も破損の原因となり得ます。とくにインプラント周囲炎は、インプラント体と顎の骨との結合を破壊してしまう病気なので、絶対に避けなければならないトラブルのひとつといえます。
- もしインプラントの破損を放っておいたらどうなりますか?
- インプラントの破損を放置すると、いくつかの深刻な問題が生じる可能性があります。まず、破損した部分の周囲の組織で感染が起こりやすくなります。インプラント周囲の組織が炎症を起こすと、インプラント周囲炎のリスクが高まり、さらなる治療が必要になることがあるでしょう。また、破損したインプラントではしっかり噛めなくなるため、食事が難しくなり、消化不良や栄養不足につながることがあります。
インプラントの破損によって生じる審美障害も大きな問題です。インプラントが欠けたままだと、笑った時や話す時に目立ち、患者さんの自信を損なうことがあります。さらに、破損を放置すると、インプラント全体がさらに損傷し、修復が難しくなることがあるため、早急に歯科医に相談し、適切な対処を行うことが重要です。
インプラントが欠けたり破損した時の対処法
インプラントが欠けたり、破損したりした場合は、次のように対処しましょう。
- インプラントの上部構造が欠けた時の対処法を教えてください
- インプラントの上部構造が欠けた場合は、まず歯科医院での早急な診察が必要です。欠けた上部構造は基本的に再製作することになります。また、原因を特定し、噛み合わせの調整や歯ぎしり対策などを行うことが重要です。
- アバットメントの破損やゆるみが起こった時の対処法を教えてください
- アバットメントの破損やゆるみが起こった場合、自分で修復を試みず、専門の歯科医に相談することが大切です。アバットメントのゆるみは、上部構造を一時的に撤去した上で、ネジを締め直します。アバットメントが破損しているケースでは、新しいものに付け替える必要が出てきます。噛み合わせの調整も併せて行います。
- インプラント体の破損や脱落の対処法は何ですか?
- インプラント体が壊れた場合は、基本的には上部構造、アバットメント、インプラント体のすべてを撤去した上で再治療を行います。インプラント体が抜け落ちた場合も同様に、再治療が適応されます。その際歯科医師はまずインプラント部位を評価し、必要な治療計画を立てます。顎の骨の状態によっては、再度のインプラント治療が難しくなることがあるでしょう。その場合、ブリッジや入れ歯治療への切り替えが検討されます。患者さんの口腔内の状況に応じた最適な治療法を選択することで、噛み合わせや機能を回復し、健康な口腔環境を維持することが可能となります。
- インプラントが破損しないように予防する方法はありますか?
- インプラントの破損を予防するためにはまず、定期的なメンテナンスを受けることが重要です。患者さんは、歯科医院での定期検診を欠かさずに受け、インプラントの状態をチェックしてもらいましょう。次に、歯科医院でのプロフェッショナルクリーニングを受けることも効果的です。これにより、インプラント周囲の清潔を保ち、インプラント周囲炎のリスクを減らすことができます。また、インプラントに大きな負担をかけないよう注意することも大切です。例えば、硬いものを噛むことや歯ぎしり、食いしばりなどの悪習慣を避けることで、インプラントの破損を防ぐことができます。これらの予防策を実践することで、インプラントを長期間にわたり健康に保つことが可能となります。
編集部まとめ
今回は、インプラントが欠ける原因や破損した時の対処法について解説しました。インプラントが欠ける原因としては、外傷、噛み合わせの変化、歯ぎしり、素材の経年劣化、インプラント周囲炎などが挙げられます。インプラント体やアバットメント、上部構造の異常を放置していると、さらに深刻なトラブルを引き起こしかねないため、早急に歯科を受診するようにしてください。歯科での対処法は、インプラントが欠けた部位や損傷の程度、周りの組織の状態によって変わります。
参考文献