インプラント治療は、歯科医療の一分野です。何らかの理由で歯を失った部位に人工的な歯根を埋め込むことによって、欠損した歯を再建する治療方法です。
これにより、歯を失った場所に自然な噛みごたえや見た目を取り戻すことが可能となります。
インプラント治療は何歳から受けられるのか、また外科手術を伴うため、治療においての制限はあるのか気になる方も多いのではないでしょうか。
中には、まだ20代のためインプラント治療は気になるができないと思っている方もいるかもしれません。
しかし20代でもインプラント治療は可能です。
20代でインプラント治療を行う場合のメリットや注意点を、この記事では詳しく解説します。
20代でもインプラント治療はできる?
20代でもインプラント治療はできるのでしょうか。
インプラントでの治療は、歯の成長発育中の子どもには実施しません。子どもの場合は顎骨の発育がまだ途中のため、埋めたインプラントが顎骨の成長や歯並びに悪影響を与える可能性があるからです。
一般的には20〜25歳位になると骨の成長が止まるため、それ以降からの治療が良いとされています。
顎の骨の成長が止まればインプラント治療は可能なため、むし歯や事故などで歯を欠損した人はインプラント治療を受けられるのです。
ただし、歯の成長が止まっているかの診断によっては、治療を延期する場合があります。
20代でインプラント治療を行うメリットは?
20代でインプラント治療を行うメリットには、どのようなものがあるでしょうか。
具体的なメリットを下記に記載します。
- 審美性が高く笑顔に自信を持てる
- 健康な歯を守れる
- 手術した部位の回復が早い
- 顎の骨の吸収が起こりにくい
上記のメリットに関して、ここでは詳しく解説します。
審美性が高く笑顔に自信を持てる
インプラント治療は天然の歯と同じような見た目を手に入れ、歯の色や形も自分の歯に合わせられるので審美性が高くなります。
20代のように若い人は、見た目にも気を使うことが多いでしょう。特にしゃべる時の口元や笑顔にも気を使ってしまうのです。
インプラント治療で歯並びをきれいにすることは、本人にとって自信につながります。
歯並びを気にして笑うことができずにいた人は、インプラント治療によって自然な笑顔を取り戻せるのではないでしょうか。
健康な歯を守れる
インプラント治療では、ブリッジなどのように周囲の歯を削ることがないため、他の健康な歯への影響も少ないです。
治療方法としては、失った歯の部分の顎骨にインプラント体を埋め込み、安定させてから上部にセラミックなどの天然の歯に近い素材の歯を被せます。
インプラントで埋め込んだ歯は、周囲の歯と独立しています。埋め込んだ顎骨を通じて食品を噛んだ振動が直接伝わるので、噛み心地を取り戻せるのです。
手術した部位の回復が早い
20代の人がインプラント手術を受けた場合は、手術した部位の回復が早いといわれています。一般的に体力と免疫力が高く、感染症のリスクも低いのも特徴です。
高齢者は糖尿病や高血圧などの持病を持っている人が多く、インプラント手術を受けるとリスクが伴います。
それに比べて20代は疾患がない場合がほとんどなので術後の経過が良好になりやすいでしょう。
また、歯槽骨も健康で骨造成が必要ないケースが多いといわれています。歯槽骨に厚みがあるとインプラント手術もスムーズに対応できるのです。
顎の骨の吸収が起こりにくい
歯が抜けた部位では、顎の骨は吸収されて痩せていきます。
20代の場合は、歯槽膿漏や歯根がない期間が短ければ顎骨の吸収もない場合がほとんどなので、手術時に歯槽骨を増やす手術をする必要がなくなります。
顎の骨はインプラント手術をするうえで、非常に重要な部位となるため、健康な状態をたもっていれば手術の手間も省けるのです。
20代でインプラント治療を行う場合の注意点
20代でインプラント治療を行う場合の注意点を下記にまとめました。
- 顎の成長が止まっているかどうか確認する
- 費用が高額になるため事前に確認しておく
- 定期的にメンテナンスに通う必要がある
上記の注意点に関して、ここでは詳しく解説します。
顎の成長が止まっているかどうか確認する
インプラントの治療は顎の骨に歯根を埋め込みますが、骨の成長が止まっていないと埋めたインプラントが顎骨の成長や歯並びに悪影響を与える可能性があるため、成長が止まるまで待つ必要があります。
インプラント体を一度埋めこんでしまうと修正は難しくなり、事前に3Dスキャンなどで口腔内を立体的に確認して埋め込む位置などの正確な判断が必要です。
顎骨の成長が止まっていることが確認できるまではブリッジや入れ歯で代用し、時期を見てインプラント治療へ進む流れになります。
20歳頃になると成長が止まるといわれていますが、個人差がありますので歯科医師の指示に従いましょう。
費用が高額になるため事前に確認しておく
インプラント治療は、自由診療になります。インプラント1本を埋め込んだ場合は、約30〜50万円(税込)と歯科医院によって大きな差があります。
一般的なインプラント手術費用の内訳は下記になります。
- CT検査費
- インプラント埋入手術費
- 上部構造
- メンテナンス
- 骨造成
- 静脈鎮静法
- その他
インターネットなどでインプラント費用が1本10万円代などとかかげている場合は、上記の中の検査費用などが含まれていない場合があります。
手術内容や使用するインプラントの素材などで費用も大きく異なります。治療に取り掛かる前にどの程度費用がかかるか歯科医院に確認しておきましょう。
定期的にメンテナンスに通う必要がある
インプラント治療が終了しても、定期的なメンテナンスのために歯科医院に来院する必要があります。一般的には3〜6ヶ月の間隔でのメンテナンスが推奨されています。
定期的なメンテナンスで、埋め込んだインプラントと骨の結合の状態をチェックし、インプラントの安定性が維持されているかを確認するのです。
インプラントの上部に取り付けたアバットメントと上部構造の状態も確認し、適切な位置にあるか歯の磨耗具合なども確認します。
インプラントを長く利用するためには、セルフケアだけでなく歯科医院でのクリーニングを実施することをおすすめします。
メンテナンス時に超音波の器具などで汚れや歯石の除去を行ってもらい、口腔内に問題がないか確認してもらうことが非常に重要なのです。
20代でインプラント治療が必要になる原因
20代でインプラント治療が必要になる原因には、どのようなことがあるのでしょうか。歯を失った主な原因を下記に記載します。
- 事故などで歯を失った場合
- むし歯で歯を失った場合
- 歯周病で歯を失った場合
上記の原因に関して、ここでは詳しく解説します。
事故などで歯を失った場合
20代で歯を失った原因として、事故などで歯を失うケースがあります。交通事故やスポーツ中での事故など理由はさまざまです。
歯がどのように折れたかによっては、差し歯で対応できる場合もありますが、根元から取れてしまっていてもインプラント治療は可能となります。
通常の交通事故での外傷に関しては、保険が適用されます。しかし原因が交通事故であってもインプラント治療は自由診療ということは変わりません。
元通りの状態にもどすためにインプラント治療を選択できるかは、それぞれのケースによって異なりますので、保険会社などに確認しましょう。
むし歯で歯を失った場合
むし歯によって歯を失った場合でも、インプラント治療によって歯を取り戻すことは可能です。
失った歯の部分に歯根が残っている場合は、歯根の部分のむし歯の状態を確認し、治療を先に進めてからインプラント治療へ移ります。
むし歯で歯を失った場合の治療法としては大きく3つに分けられます。
- インプラント:失った歯の部分に人工の歯根で埋め込む方法
- ブリッジ:失った歯の両隣の歯を大きく削って土台にし、人工の歯を橋のようにかける手法
- 入れ歯:残っている歯にバネをかけて人工の歯をつけて補う治療法
上記の方法は、材質によっては保険適用になります。
歯周病で歯を失った場合
歯周病などの病気で歯を失った場合でもインプラント治療は可能です。ただし、基本的な歯周病治療を行ってからインプラント治療に移行するのが一般的です。
歯周病の原因菌はインプラントの手術部位にも悪影響を与える場合があるので、歯周病治療が終わってからインプラント治療に移行します。
歯周病によって骨が減ってしまっている人は、骨の再生手術などでインプラント体が固定できるスペースを確保することが必要です。
歯周病の治療が終わったら、インプラント治療に必要な骨の状態を確認し、治療へ進みます。
インプラントの寿命はどのくらい?
インプラントは入れ歯やブリッジよりも寿命が長いことが多いです。
近年では40年程に渡ってインプラントが使用できたとの報告もあります。
インプラントの寿命を考える上で、インプラントの生存率という考え方があります。
インプラントの生存率は10年で約90%、20年で70〜80%といわれています。
不具合などが発生した際も、歯科医院によってはインプラント治療に対して保証が設けられている場合があり、費用負担がなかったり一部の負担で済んだりすることがあります。
インプラントは、定期メンテナンスと保証がセットになっている場合がほとんどです。
ただし保証内容と保証期間に関しては歯科医院によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
20代のインプラント治療は歯科医院選びも大事
20代のインプラント治療は歯科医院選びも大事です。インプラント治療は外科手術が必要となるため、選ぶ時のポイントを下記に記載します。
- インプラント治療を行える歯科医師が在籍しているかどうか
- インプラント治療の実績が多いかどうか
- 品質の高いインプラントを扱っているかどうか
上記の内容に関して、ここでは詳しく解説します。
インプラント治療を行える歯科医師が在籍しているかどうか
インプラント治療は専門的かつ複雑な治療法のため、歯科医院を選ぶ際にはインプラント治療を行える経験豊富な専門の歯科医師が在籍しているかが非常に重要なポイントです。
日本口腔インプラント学会では、専門の医師の認定を行っています。研修施設で一定期間以上のインプラント治療研修と試験に合格しないと認定されません。
認定後も治療方法のアップデートを定期的に実施しているため、このような専門の知識をもつ歯科医師が在籍していると安心です。
インプラント治療を行うためには、高度な技術を活かせる設備が整っていることも重要なので、歯科医院が導入している医療設備も調べておきましょう。
インプラント治療の実績が多いかどうか
インプラント治療は高度なスキルと知識が必要な治療法です。医師の専門性やインプラント治療の経験・実績などを確認しておきましょう。
また、歯茎の骨が減り不足している場合などは、骨造成が必要です。インプラント治療は行っているが骨造成ができない歯科医院もあるので、このような点も判断基準の1つになります。
品質の高いインプラントを扱っているかどうか
インプラントメーカーは全世界で無数にあるといわれています。
高品質の素材を用いたメーカーは成績・評価・安全性が高く安心して利用できるため、世界シェアの高いメーカーを取り扱っている歯科医院を選ぶのがおすすめです。
生産量が少ないメーカーは、トラブルなどで修理やメンテナンスが必要になった時に、生産中止になっている場合があるため注意が必要です。
また現在は海外製品も多いため、医療機器として国内の認可を受けているインプラント製品であるかも確認しておきましょう。
安全性と品質が確保されている可能性が高まります。
歯科医院が提供するインプラント治療の保証やアフターケアのサポートも重要です。品質の高いインプラントを提供する歯科医院は、治療後のサポートも充実しているからです。
まとめ
20代でのインプラント治療に関して、骨の成長が止まっていれば治療は早く開始した方がメリットが多いことがわかりました。
20代の場合は治癒力も高く、インプラント手術後の組織再生や骨組織の形成が迅速に進む可能性があります。
歯を失ってしまった原因は人によってさまざまですが、義歯やブリッジなどで代用していると歯のない部分の骨は減っていく可能性が高いです。
咀嚼に関しては、インプラントによって噛み心地が健康な歯と同じように実感できるため、食事の楽しみが増えるのではないでしょうか。
人生90年ともいわれる現代ですが、これからの長い人生を考えると歯の健康は非常に重要です。
インプラント自体はむし歯になることがないので周りの歯への影響も少なく、定期的なメンテナンスで口腔内の健康を保ちやすいでしょう。
インプラントに興味をもっているけど20代でまだ早いのではと悩んでいる人は、インプラント専門の医師のいる歯科医院へ相談してみてはいかがでしょうか。
参考文献