インプラント

インプラントの土台は何を選べばよい?形状や素材についてもまとめました

インプラントの土台は何を選べばよい?形状や素材についてもまとめました

近年、歯を失ってしまった際の治療としてインプラント治療が注目されています。これまでは入れ歯やブリッジが主流でしたが、なぜインプラント治療が人気を集めているのか、どのような治療なのか、詳しくご紹介します。「むし歯がひどく歯を失ってしまった」「スポーツ時に歯が折れた」「インプラント治療について知りたい」という方はぜひ最後までご覧ください。

インプラント治療とは

インプラント治療とは 歯科におけるインプラント治療とは、歯を失った部分の顎の骨に人工歯根を直接埋め込み、その上にセラミックなどで作られた人工歯を被せる方法です

インプラント治療は開発されたばかりと思っている方もいらっしゃるでしょうが、実は紀元前まで歴史をさかのぼることができます。1900年代に登場しましたが、貴金属を材料としていたためなかなかうまくいきませんでした。その後、コバルトクロム合金などを材料としたものなども作られましたが、生体適合性が劣っていたため採用はされませんでした。1950年代にチタンと骨が結合することがわかり、さまざまなメーカーから発売されるようになりました。日本では1983年に、インプラントを用いた治療が開始されています

インプラント治療の第一のメリットは、周りの健康な歯に悪い影響を与えないという点です。失った歯を補うために行われていた入れ歯やブリッジといった従来の治療法では、周囲の歯に金具を引っかけたり、義歯を安定させるために削ったりしなければなりませんでした。それだと周囲の歯に負担がかかり、徐々にもろくなっていってしまいます。それに比べてインプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込むため、他の歯に負担をかけにくいといえます。

また、強固に固定されているため、まるで自分の歯のように噛めることも特徴です。 さらに、入れ歯だと笑ったり話をしたりする際に金具が見えてしまうことがありますが、インプラントではその心配はありません。

インプラントの構造

メーカーによって異なりますが、一般的なインプラントは「人工歯(上部構造)」「アバットメント」「インプラント体」の3つから成り立っています。ここからは、それぞれがどのような役割を果たしているのか詳しくご紹介します。

人工歯

人工歯とは、インプラントの一番上に設置されるパーツです。セラミックを素材としている場合が多く、食べ物を咀嚼する役割を担っています。人工歯は口を開けた時に外から見える場所にありますが、治療時に自分の歯と色味を合わせることができるため、入れ歯やブリッジのように目立ってしまったり違和感が出てしまう心配がありません。また、セラミックは負荷に強く、ある程度の力で物を噛んでも壊れにくいことが特徴です。ただ、極度に力を加えると破損したり、経年劣化でもろくなったりすることもあるため、定期的なケアに努めることが大切です。

アバットメント

アバットメントとは、人工歯とインプラント体をつなげる小さな金属のパーツです。インプラント体の上部にアバットメントを連結し、その上に人工歯を被せることで接続するという仕組みになっています。アバットメントは高さを調節する役割も担っており、患者さん一人ひとりの歯肉の厚さやインプラントを埋め込む角度などに合わせて適したものが使用されます。さまざまな形状のものがあり、噛み合わせに影響が出ないよう工夫されています。また、インプラントのなかには、アバットメントとインプラント体が一体になっているものもあります。

インプラント体

インプラントの土台になるのがインプラント体です。直径3~5mm、長さ6~18mmと大きさはさまざまで、口や顎の骨の状態によって使い分けがされています。形状については後ほど詳しくご紹介しますが、ねじのような形をしているスクリュータイプが使われるのが一般的です。体内に埋め込む必要があるため、アレルギー反応の少ないチタンまたはチタン合金といった素材を使用しているのも特徴です。これらの素材は生体親和性に優れ、腐食・劣化しにくいという特徴も兼ね備えています。

インプラントの種類

インプラントの種類 前項で、「アバットメントとインプラント体が一体になっているものがある」とご紹介しました。このタイプを「ワンピースタイプ」と言い、それぞれが分かれているタイプを「ツーピースタイプ」と言います。

これらの特徴をご紹介する前に、インプラント治療における代表的な術式を2つご説明します。1つ目は、インプラントの埋め込みからアバットメントの連結までを1回の手術で終わらせる「1回法」です。2つ目は、手術を2回に分けて行う「2回法」です。2回法では、1回目の手術でインプラント体を埋め込み、骨と結合するまで3~6ヶ月ほど待ってから再度歯肉を切開してアバットメントを連結するという流れで治療を行います。

ワンピースタイプ

アバットメントが一体化しているワンピースタイプは、主に1回法に用いられます。手術の回数が少ないため、患者さんの体への負担が少ないのが特徴です。また、ツーピースタイプよりも部品が少ないので費用を抑えられる、治療期間が短い、ねじが緩む心配がない、強度が強いといったメリットがあります。一方で、顎の骨の厚みがない方には使えない、インプラントの角度によっては人工歯が影響を受ける、アバットメントにトラブルが発生した場合まるごと交換しなければならないといったデメリットもあります。

ツーピースタイプ

インプラント体とアバットメントをねじで連結するツーピースタイプは、1回法と2回法のどちらでも対応可能です。ツーピースタイプのメリットは、手術を1回で終わらせるか2回に区切るか選べること、患者さんの口の状態に合わせてさまざまなアバットメントを選択できることなどが挙げられます。ただし、1回法よりも手術の回数が多いため身体への負担が比較的大きくなる、使用する部品が多いためワンピースタイプよりも費用が高い、治療期間が長い、インプラントと連結しているねじが緩んでしまう可能性があるといったデメリットが存在することも頭に入れておきましょう。

インプラント体の形状

インプラント体の形状 続いて、インプラント体の形状についてご紹介します。インプラント体は「スクリュータイプ」「シリンダータイプ」「バスケットタイプ」の3つに分類されます。

スクリュータイプ

スクリュータイプはねじのような形をしています。板にねじを埋め込むときちんと固定されるように、顎の骨に固定しやすく安定感が強いのが特徴です。現在のインプラント治療ではスクリュータイプのインプラントを使用するのが一般的です

シリンダータイプ

スクリュータイプのようならせん状の切れ込みは入っておらず、円筒状になっているのがシリンダータイプです。埋め込む方法は非常にシンプルで、ハンマーのような器具で打ち付けるだけで完了します。表面積が小さく、顎の骨との結合が弱いというデメリットがありますが、一部の症例で使用されています

バスケットタイプ

バスケットタイプのインプラント体には、中心に空洞が存在しています。この空洞に骨の一部を入れることでほかのインプラント体よりも強い結合が可能になります。しかし高度な技術を要するため、現在のインプラント治療ではほとんど使用されていません

インプラント体の素材

インプラント体の素材 インプラントは体の中に埋め込むため、強度や耐久性だけでなく安全性も求められます。これらの条件を満たす素材として代表的なのが、チタンとジルコニアです。それぞれの素材にどのような特徴があるのか、一緒に見ていきましょう。

チタン

繰り返しになりますが、インプラントには強度と耐久性、安全性が必要不可欠です。金属にはさまざまな種類がありますが、先ほどの条件をすべて満たしているのがチタンです。チタンは骨と直接結合する性質(オッセオインテグレーション)を持っており、この性質によって食べ物をしっかりと噛むことができるのです。なお、チタンはインプラント治療のほかに、人工骨や人工関節、義足といったさまざまなものに応用されています。

ジルコニア

近年、ジルコニアという素材の新しいインプラントも誕生しました。衝撃や引っ張る力に弱いというセラミックの弱点を克服し、さらに強度を増して作られているのがジルコニアです。チタン同様、強度や耐久性、安全性に優れており、強い衝撃を受けても簡単には破損しないというのが特徴です。また、白い材料であるため、審美性も高いです。ただ、チタンに比べて価格がやや高額なこと、症例数が少ないことが欠点として挙げられます。なお、ジルコニアはその白さを生かして、インプラント体だけでなく人工歯(上部構造)にも用いられることが多くなってきています

インプラントの土台を選ぶポイント

インプラントの土台を選ぶポイン インプラントの土台を選ぶ前に、いくつかのポイントを押さえておきましょう。

1つ目は、自分の口や歯の大きさに合っているかということです。インプラントは顎の骨に直接埋め込むため、口や歯の大きさに合っていないと痛みが出たり審美性が失われたりする可能性があります。形状や大きさはメーカーによって異なるため、それぞれの特徴について医師からきちんと説明してもらうことをおすすめします。

2つ目は、予算内で治療が受けられるかどうかです。インプラントは使用するメーカーによって費用が変わります。保険が適用されない自由診療ですので、「こんなに高額だとは思わなかった」と後悔しないよう事前に費用についてしっかりと確認しておきましょう。

3つ目は、その土台がどの術式に対応しているかを理解しておくことです。「インプラントの種類」の項目でお伝えしたように、ツーピースタイプのインプラントは1回法と2回法のどちらにも対応しているのに対し、ワンピースタイプは1回法にしか対応していません。どちらの術式にしたいか、どれくらいの治療期間で終わらせたいかを事前に明確にしておくと、土台選びもスムーズに進められるでしょう。

編集部まとめ

編集部まとめ いかがでしたでしょうか。今回ご紹介したように、一口にインプラントといっても、形状や材質、素材、メーカーにはさまざまな種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分に合った方法を選択することが大切です。また、インプラント治療で後悔・失敗しないようにするには信頼できる歯科医院を選ぶことも重要です。この記事がインプラント治療を検討されている方の参考になったら幸いです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
宮島 悠旗医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

宮島 悠旗医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

愛知学院大学歯学部卒業 / 東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了 / 東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野 助教 / 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス起業 / 著書「国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の『デンタルケア』-」(幻冬舎)出版 / 合同会社T&Y Connection設立 / ASIA GOLDEN STARAWARD(企業家賞)受賞 / 著書「歯並び美人で充実人生-幸せを呼ぶゴールデンスマイル-」(合同フォレスト)出版 / 株式会社オーティカインターナショナル認定講師 / 現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランス矯正歯科医を行っている / 専門は矯正歯科(Invisalign®︎、小児矯正、Myobrace®︎、マルチブラケット、アンカースクリュー、PBMオルソ(光加速矯正装置))

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愛知学院大学歯学部卒業 / 東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了 / 東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野 助教 / 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス起業 / 著書「国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の『デンタルケア』-」(幻冬舎)出版 / 合同会社T&Y Connection設立 / ASIA GOLDEN STARAWARD(企業家賞)受賞 / 著書「歯並び美人で充実人生-幸せを呼ぶゴールデンスマイル-」(合同フォレスト)出版 / 株式会社オーティカインターナショナル認定講師 / 現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランス矯正歯科医を行っている / 専門は矯正歯科(Invisalign®︎、小児矯正、Myobrace®︎、マルチブラケット、アンカースクリュー、PBMオルソ(光加速矯正装置))

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