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大人になって歯が抜けたらどうする?応急処置や放置するリスクを解説

大人になって歯が抜けたらどうする?応急処置や放置するリスクを解説

歯が抜けるという経験は誰もが必ずするものです。なぜなら子どもの歯である乳歯はすべて大人の歯である永久歯へと生え変わるからです。乳歯が抜けるのは一般的に小学校の期間なので、どのような経験だったかはあまり覚えていない人も多いかもしれません。

それだけに、大人になって歯が抜けた場合は戸惑ってしまうことも多いでしょう。ここではそんな大人になってから歯が抜ける原因や放置するリスク、応急処置の方法などを詳しく解説します。

歯を抜けたまま放置するリスク

歯を抜けたまま放置するリスク 大人になってから歯が抜けた場合、放置していると次のようなリスクが生じます。

噛み合わせが悪くなる

歯が抜けると、歯列内にスペースが生じます。私たちの歯はスペースがあるとそこに向かって動く性質があることから、歯が抜けたまま放置していると歯並びが悪くなります。同時に、上下の噛み合わせも悪くなっていくことでしょう。

これは口腔全体の健康において、非常に大きなデメリットとなるため要注意です。歯並びが悪くなれば、口元の審美性も低下します。噛み合わせの悪化は、そしゃく能率が低下するとともに、一部の歯の寿命を大きく縮めることにもつながるのです。

顎の痛み、肩こり、頭痛が起きる

歯が抜けた状態を放置していると、顎の痛みや肩こり、頭痛が起こる場合があります。これは上段で説明した噛み合わせの悪化に付随する症状といえます。噛み合わせが悪くなると、そしゃく機能の支点となる顎に大きな負担がかかるからです。

そして、筋肉は顎や肩、頭とも連携していることから、その影響は肩こりや頭痛となって現れます。一見すると口腔内とは何ら関係がない症状に思えますが、実際は深いつながりがあることが多いのです。とくに歯が抜けた状態を放置している人は要注意といえます。

記憶力や学習能力が下がる

上下の歯でしっかり噛めることは、脳に良い影響を与えます。口腔周囲の筋肉が活発に働き、脳を含めた頭部の血流も良くなるからです。近年は、そしゃくする力と認知症との関連も指摘されるようになっており、噛み合わせが正常であることの重要性も増してきています。

上でも述べたように、歯が抜けた状態を放置すると噛み合わせが悪くなることから、記憶力や学習能力が低下するリスクも避けられないのです。その点も踏まえた上で、失った歯の対処法については真剣に考える必要があります。

見た目が悪くなったり、老けて見える

歯が抜けた状態を放置していると、単純に見た目が悪くなります。それはすべての人に同意してもらえるデメリットでしょう。私たちの歯列はすべての歯がそろっていてはじめて正常とみなせるものなので、歯が1本でもない部分があると見た目が悪くなるのです。

不思議なことに、老けて見えることもあります。ちなみに、何らかの理由で失った歯というのは、後段で紹介する歯科治療によって回復できます。保険が適用される方法もあるため、気軽に受けることができます。

大人になって歯が抜ける理由

大人になって歯が抜ける理由 次に、大人になってから歯が抜ける理由について説明します。永久歯というのは、もともと抜けるものではないので、必ず何らかの外的な理由が存在しています。一般的には、次の2つが挙げられます。

外傷による強い衝撃

歯に対して強い衝撃が加わることで、歯が抜けたり、折れたりします。これは大人になってから歯が抜ける原因として、最もわかりやすいシチュエーションといえるでしょう。例えば、高齢の人は転んだ時に顔面を強打することで歯が抜けることがあります。

若い人でもスポーツをしている時に、他の選手と激しく衝突したり、ボールが顔面に当たったりすることで歯が抜けます。そうした外傷による歯の脱落は、一種の事故であるため、誰にでも起こり得るといえるでしょう。ちなみに、外傷による強い衝撃で歯が折れた場合も、保存が難しくなることで抜歯を余儀なくされるケースが多いです。

歯周病やむし歯

歯周病や虫歯が原因で、大人になって歯が抜けることがあります。それぞれ解説します。

・歯周病
歯周病は、歯茎が赤く腫れて、歯磨きの時に出血が認められる病気です。軽度の歯周病である歯肉炎(しにくえん)の段階なら、歯が抜けるリスクも限りなくゼロに近いのですが、炎症反応が顎の骨にまで広がった歯周炎(ししゅうえん)となると話は変わります。なぜなら歯周炎では、歯を支えている骨や歯茎が破壊されていってしまうからです。歯がどれだけ健康であっても、それを支える組織がなくなってしまえば抜け落ちます。

そして、日本人が歯を失う原因の第一位が歯周病であるという事実も忘れてはいけません。歯周病は自覚症状に乏しい病気なので、気づいた頃には重症化しており、歯の保存が難しくなるのです。

・むし歯
むし歯で歯が抜けるメカニズムは、歯周病よりも理解しやすいでしょう。むし歯になると細菌が作り出す酸によって、エナメル質や象牙質が溶かされていきます。むし歯がある程度、進行すると歯の頭の部分である歯冠(しかん)がボロボロになり、歯としての形を成さなくなります。その結果、汚染された歯根だけが残り、最終的には抜歯することになるのです。

ただ、むし歯は歯を失うまでにさまざまな症状が現れることから、治療をせずに放置し続ける人は少なくなっています。どこかの段階でむし歯治療を受ければ、歯を残すことも難しくなくなるのです。そのためむし歯は、日本人が歯を失う原因の第二位にとどまっています。

歯が抜けた際の応急処置

歯が抜けた際の応急処置 何らかの理由で大人の歯が抜けた場合は、応急的な処置が必要となります。少なくとも以下の3点は実践するようにしてください。

止血する

歯が抜けた原因が外傷である場合は、患部から出血していることがほとんどです。全身の状態が良ければ、出血もすぐに止まりますが、受傷の状況によっては血が止まりにくくなる場合もあります。そんな時は患部にガーゼを当てるなどして止血に努めましょう。歯科医院で抜歯した時のように、清潔なガーゼを歯が抜けた部分で噛むと、効率よく止血できます。

歯を保存する

外傷で歯が抜けたのであれば、脱落歯を元の位置に戻せる可能性があります。歯の再植(さいしょく)という処置で、歯がきれいに抜け落ちていることが前提となります。また、抜け落ちた歯に付着している歯根膜(しこんまく)が正常でなければならないため、歯を保存するにしても以下の点に注意する必要があります。

・歯をゴシゴシ洗わない
汚れが付いているからといって、歯を歯ブラシなどでゴシゴシ洗ってしまうと、歯根膜が損傷します。熱湯を使って洗浄することも厳禁です。歯の表面に汚れが付着している場合は、水道水で軽く洗い流す程度にとどめましょう。

・牛乳に保管する
脱落歯は、牛乳かティースキーパーという専用の保管液に浸けておくと良いです。そうすることで歯根膜を良い状態で保存できます。どちらも手に入らない場合は、抜けた歯を口腔内で保管しておきましょう。その際、脱落歯を飲み込まないように注意する必要があります。

なるべく早期に歯医者に行く

大人の歯が抜けた場合は、脱落歯の状態にかかわらず、できるだけ早く歯科を受診することが大切です。それは外傷による歯の脱落に限りません。むし歯や歯周病が原因で歯が抜けた場合も積極的な治療が必要な状態なので、早急に歯科へ連絡してください。歯の再植に関しては、歯が抜けてから30分以内に歯科を受診するのが望ましいです。歯科を受診するまでに時間が短ければ短いほど、歯を元に戻せる可能性も高くなります。

歯が抜けた際の治療方法

歯が抜けた際の治療方法 大人の歯が抜けた場合の治療方法としては、インプラント・ブリッジ・入れ歯の3つが選択肢として挙げられます。それぞれに異なる特徴とメリット・デメリットがあります。

インプラント

インプラントは、失った歯の治療法の中で唯一、「人工歯根」という特殊なパーツを使う方法です。人工歯根は、フィクスチャーやインプラント体とも呼ばれるパーツで、その名の通り失った歯根を人工的に回復することができます。具体的には顎の骨にチタンで作られた人工歯根を埋め込んで、その上に被せ物を装着します。被せ物をセラミックで作れば、失った歯の見た目から構造までを忠実に再現できるのです。そんなインプラント治療には、次に挙げるようなメリットとデメリットを伴います。

【メリット】
・失った歯を歯根から回復できる
上でも述べたように、インプラントなら外傷やむし歯などで失った歯を歯根から回復することが可能です。ただし、歯周病で歯を失った場合は、顎の骨の状態に注意しなければなりません。なぜならインプラントは、顎の骨が正常でなければ人工歯根を安全に埋め込めないからです。その点をクリアーできれば、従来法であるブリッジや入れ歯よりも良い結果が得られやすくなります。

・本物の歯のようにしっかり噛める
歯根があるインプラントは、硬いものでもしっかり噛めます。

・見た目が自然で残った歯と調和しやすい
ブリッジや入れ歯は、やや不自然と感じることもあるかもしれません。それは歯根がないからです。歯根があるインプラントなら、余計なパーツをつける必要がなく、独立した形で装着できます。

・歯槽骨の吸収を防ぎやすい
インプラントでは歯根があることで、噛んだ時の力が顎骨に伝わりやすくなっています。歯を支える歯槽骨の退化現象を抑えることができ、口腔全体の健康維持・増進にも寄与することでしょう。

・装置が長持ちしやすい
一般的なケースなら、インプラントは10〜15年程度、持つものと考えられています。4~5年で壊れてしまう保険の入れ歯と比較した場合は、寿命の長さが際立ちます。ブリッジも保険診療の場合は、7〜8年程度で寿命を迎えるといわれています。

・周りの歯を犠牲にする必要がない
ブリッジは少なくとも両隣の歯2本を大きく削らなければなりません。入れ歯の場合もクラスプやレストを引っ掛ける部分を少し削ったり、噛んだ時の力を残った歯で受けとめたりしなければならないのです。その点、人工歯根があるインプラントは、周りの歯を犠牲にする要素がひとつもないのです。

【デメリット】
・歯周病があると適応が難しい
歯周病にかかっている状態では、インプラント治療を行うことが難しいです。歯周病はインプラントの天敵と呼ばれるほど、この治療法にとっては厄介な病気だからです。もちろん、歯周病治療を行って、顎の骨の状態が改善すれば、インプラント治療も可能となります。

・疾患があると適応できない可能性もある
糖尿病や高血圧など全身疾患がある方、抗凝固薬や高血小板薬など血が止まりにくい薬を服用している方や金属アレルギーがある方などは歯科だけではなく内科の医師と連携して治療の可否を決める場合もあります。

・外科手術を行わなければならない
顎の骨に人工歯根を埋め込む手術は、すべてのインプラント症例で必須となっています。

・治療にかかる期間が長い
インプラント治療は、4〜5ヵ月程度かかるのが一般的です。顎の骨の治療が必要な場合は、さらに長い期間を要します。

・自費診療になる
インプラント治療には原則として保険が適用されません。自費診療となるため、インプラント1本あたり30万〜40万円程度の費用を全額自己負担する必要があります。

ブリッジ

ブリッジは、欠損部に橋を架けるような形で装置を被せる治療法です。基本的には、歯が抜けた原因に関わらず、ほとんどのケースに対応できます。もちろん、それは支台歯となる健康な歯が適切に位置に残っている場合に限ります。

【メリット】
・外科手術が必要ない
ブリッジには、インプラントに伴うような外科手術は不要です。

・装置の安定性が高い
ブリッジは固定式の装置なので、噛んだ時に外れるようなことはありません。

・保険内で作ることができる
ブリッジには保険が適用されます。

・治療期間が比較的短い
保険診療のブリッジは、1〜2ヵ月程度で治療が完了します。

【デメリット】
・2本以上の歯を大きく削らなければならない
ブリッジでは、支台歯となる歯を少なくとも2本以上、大きく削らなければ装置を装着できません。

・歯根は回復できない
ブリッジで回復できるのは、歯の頭の部分である歯冠(しかん)だけです。

・顎の骨が痩せていく
歯が抜けた部分には、噛んだ時の力が加わらないため、顎の骨の吸収は避けられません。

入れ歯

入れ歯は、人工歯と義歯床(ぎししょう)、留め具であるクラスプなどからなる着脱式の装置です。設計の自由度が高いため、ほぼすべての症例に適応できます。

【メリット】
・保険内で作れる
入れ歯はブリッジと同様、保険診療で作ることができます。

・治療期間が短い
入れ歯の治療期間は、1〜2ヵ月程度です。

・故障した時の修理がしやすい
保険診療の入れ歯は、ほとんどのパーツがプラスチックで作られているため、変色や摩耗、亀裂が生じても修理を容易に行えます。

・外科手術が不要
入れ歯で外科手術を行うことはまずありません。残った歯や歯茎、顎の骨はそのままの状態で治療を行えます。

【デメリット】
・使用中にずれる、外れる
入れ歯は使用中にずれたり、外れたりすることがあります。

・見た目が不自然
入れ歯には、金属製のクラスプが付いていたり、義歯床の部分が大きかったりするため、インプラントやブリッジと比較すると見た目が不自然です。

・顎の骨が痩せていく
入れ歯が回復できるのは歯冠だけなので、顎の骨の吸収は抑えられません。

・壊れやすい
入れ歯は故障しやすい装置です。その分、装置の寿命も短くなっています。

まとめ

まとめ 今回は、大人になってから歯が抜ける原因と応急処置の方法、そのままの状態で放置するリスクについて解説しました。

歯が抜けた場合の治療法としては、インプラント・ブリッジ・入れ歯の3つが選択肢として用意されていますので、自分の価値観やライフスタイルに合った装置を選ぶことが大切です。

この記事の監修歯科医師
坪光 玄義医師(地挽歯科医院)

坪光 玄義医師(地挽歯科医院)

鶴見大学歯学部 卒業 / 平成24年歯科医師免許証 取得 / 現在は地挽歯科医院、蕨にしき町歯科・口腔外科(いずれも非常勤)

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