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切開しないフラップレスインプラントとは?メリット・デメリット・治療の流れを解説

インプラント フラップレス

通常のインプラント治療では、骨にインプラントを埋め込む穴を開ける際、歯茎を切開して剥離する必要があります。

そのため、なかにはインプラント治療に恐怖心を抱き、治療に踏み切れない方もいるかもしれません。

そのような方におすすめなのが、歯茎を切開しないフラップレスインプラントと呼ばれる治療方法です。

フラップレスインプラントでは歯茎を切開せずに、小さな穴を開けて治療します。そのため、出血・腫れ・痛みなどが少ないのが大きな特徴です。

今回はフラップレスインプラントのメリット・デメリット・治療の流れなどをご紹介します。通常のインプラント治療を受けるか迷われている方は、ぜひ参考にしてみてください。

切開しないフラップレスインプラントとは?

手鏡を持つ日本人女性

フラップレスインプラントとは、歯茎を切開せずにインプラントの埋め込みを行う手術方法です。

通常のインプラント手術の場合、歯茎をメスで切開し、インプラントを埋め込む顎の骨を露出させてからドリルで穴を開けます。

一方フラップレスインプラントでは、歯茎に小さな穴を開け、そこからドリルを使って顎の骨に穴を開けます。歯茎を大きく切開する必要がないため、痛み・腫れ・出血を抑えられる手術方法です。

また、歯茎に開けた穴は自然に治るので、縫合の必要もありません。

通常のインプラント治療に恐怖を感じる方・できるだけ痛みが少ない手術を希望する方・治療期間を短くしたい方などに適した手術方法といえるでしょう。

フラップレスインプラントのメリット

病院にいる医療スタッフ

フラップレスインプラントの大きなメリットの1つが手術時間を短縮できるという点です。また、歯茎の切開などが不要なので、インプラント治療への恐怖心も軽減できるでしょう。

このほか、術後の腫れが少ない・痛みが少ない・身体へのダメージが少ないなどのメリットがあります。

フラップレスインプラントのメリットを、以下で詳しく解説します。

手術時間を短縮できる

砂時計と時計

フラップレスインプラントでは歯茎を切開したり縫合したりする必要がないため、手術時間が短縮できます。

通常のインプラント治療の場合、1本のインプラントを埋め込むのに30〜40分程かかります。しかし、フラップレスインプラントでは1本あたり10〜15分程の手術時間に短縮できるのです。

手術時間をなるべく短くしたい方は、フラップレスインプラントがおすすめです。

恐怖心を軽減できる

通常のインプラント手術の場合、歯茎を切開して顎の骨を露出する必要があります。インプラントの埋め込み位置をしっかりと目視する必要があるため、ある程度広く歯茎を切開しなくてはならないのです。

そのため、歯茎を切るのに恐怖心を感じてしまう患者さんも少なくないでしょう。

そのような恐怖心も、フラップレスインプラントならば軽減できます。

フラップレスインプラントでは、歯茎を切開して大きく剥離する必要はありません。パンチやドリルを使って、歯茎に3〜4ミリ程度の小さな穴を開けるだけです。

縫合の必要もないため、素早く手術が完了します。

通常のインプラント手術に恐怖心を感じるという方は、フラップレスインプラントを検討してみるとよいでしょう。

術後の腫れが少ない

フラップレスインプラントには、術後の腫れが少ないというメリットがあります。

インプラント治療では、手術後に歯茎などの腫れが伴うケースが多いです。これは、傷口を治すために炎症反応が起こるからです。

通常のインプラント手術の場合、ある程度広く歯茎を切開する必要があります。そのため傷口がどうしても大きくなるので、炎症反応が強く現れやすく、腫れが出やすい傾向にあるのです。

一方、フラップレスインプラントの場合、歯茎に3〜4ミリ程度の小さな穴を開けるだけなので、傷口が小さく炎症反応もそれほど強くありません。そのため、術後の腫れも少ない傾向にあるのです。

痛みが少ない

歯を気にする若い男性

傷口が小さいフラップレスインプラントは、痛みも少ない傾向にあります。

フラップレスインプラントでは歯茎を剥離することなくインプラントを埋め込めるので、痛みや腫れなどを最小限に抑えることが期待できます。

手術後の腫れや痛みをなるべく抑えたい方は、フラップレスインプラントがおすすめです。

身体へのダメージが少ない

傷口が小さく手術時間も短いフラップレスインプラントは、身体へのダメージが少ない傾向にあります。

そのため、高血圧や糖尿病などの全身疾患をお持ちの方でも、適応となる可能性があります。

全身状態によっては適応できない場合もありますが、一度専門の歯科医師に相談してみるとよいでしょう。

フラップレスインプラントのデメリット

医療イメージ

患者さんの負担が少ないフラップレスインプラントですが、骨の状況によっては対応できないケースがあります。また、フラップレスインプラント治療が行える歯科医院が少ないのもデメリットです。

以下でフラップレスインプラントのデメリットを詳しく解説します。

骨の状況によっては対応できないケースがある

フラップレスインプラントは、歯茎を切開しないため、顎の骨の状態を直接確認できません。

そのため、骨の厚みがなかったり密度が低かったりするなどの不安要素がある場合には、フラップレスインプラントで対応できない場合があります。

不安要素が解消されていないなかで手術を行うと、顎骨外への穿孔・神経や血管の損傷などといった、手術の失敗につながる恐れがあるからです。

そのため、事前の検査で骨の状態がフラップレスインプラントに適していないと判断された場合には、通常のインプラント手術が提案されるケースがあります。

また、手術中に事前のシミュレーションと異なる状態や異常が発見された場合にも、通常のインプラント手術に切り替える場合があるでしょう。

どのような場合に対応外となるのか、またその際の対策法にはどのようなものがあるのか、事前にしっかりと確認しておきましょう。

フラップレスの治療を行える歯科医院が少ない

フラップレスインプラントの治療を行うには、それ専用の医療設備や器具が必要です。それに加え、特殊な技術が必要となるため、歯科医師の高い技術力と豊富な経験も必須です。

そのため、フラップレスインプラントの治療が行える歯科医院は少ない傾向にあります。治療を希望しても、対応している歯科医院がなかなか見つけられない点がデメリットといえるでしょう。

フラップレスインプラントの治療の流れ

歯医者と男性患者

フラップレスインプラントの治療の流れは、まず事前検査を行い治療計画を立てます。その後、治療計画に沿って手術を行い、最終的には人工歯根に上部構造を装着して治療完了です。治療後は、定期的なメンテナンスなどが重要となります。

以下で、フラップレスインプラントの治療の流れを解説します。

治療計画を立てる

フラップレスインプラント治療で特に重要なのが、綿密な治療計画の立案です。

顎骨の状態を目視できないフラップレスインプラントにおいて、CT装置などを用いた事前検査で顎骨の形状を把握しておくのが非常に重要となります。

CT装置によって得られた画像をもとに、コンピューター上でインプラント挿入のシミュレーションを行い、治療計画を立てていきます。

場合によってはサージカルガイド(サージカルテンプレート)と呼ばれるマウスピース型の装置を作成することもあるでしょう。

サージカルガイドとは、インプラントを埋め込むために適切な穴の位置・深さ・角度をサポートしてくれる装置です。収集した画像データをもとに、患者さん一人ひとりに合わせ、オーダーメイドで作成します。

このような、綿密な治療計画やサポート装置の作成が、より安全性の高い治療につながるのです。

麻酔を行う

注射器とクスリ瓶

フラップレスインプラントで行う麻酔は局所麻酔です。穴を開ける歯茎に注射にて麻酔を行います。

歯茎に穴を開ける

局所麻酔をかけたら、骨を削るドリルを通すための穴を歯茎に開けます。穴を開ける器具としてパンチやドリルを使用します。

歯茎に開ける穴は非常に小さく、3〜4ミリ程度です。治療後、穴は自然と治るので縫合の必要もありません

このように、フラップレスインプラントでは歯茎の切開・剥離・縫合が不要なため、通常のインプラント治療よりも手術時間が短い傾向にあるのです。

顎の骨を削る

歯茎に開けた穴からドリルを使って顎骨を削り、インプラントを埋め込むための穴を開けます。

事前シミュレーションどおりの深さ・角度になるよう、慎重に骨を削り穴を開けていきます。場合によっては再度CT検査を行い、穴の深さや角度を確認するケースもあるでしょう。

なお、歯茎と顎骨に穴を開ける工程において、サージカルガイドを使用する場合もあります。

インプラントを埋め込む

インプラントイメージ

顎骨の穴の形成が終わったら、インプラントを埋め込み蓋を取り付けて手術は終了です。通常は、インプラントと顎骨が結合するまで3〜6ヵ月程待ってから、仮歯を取り付ける工程に移ります。

仮歯を付ける

インプラントと顎骨が十分に結合したら、蓋を取り外し、アバットメントと仮歯を付けます

インプラントの埋め込み手術から仮歯の取り付けまでの間に、インプラントと顎骨の結合を待つ治癒期間を設けるのが一般的です。

しかしフラップレスインプラントの場合、顎骨の骨量が十分にありインプラントがしっかりと固定できたときには、手術当日に仮歯を付けることも可能です。

この場合には、手術当日から噛む機能がある程度回復できるので、すぐに普段どおりの生活が送れるでしょう。

通常のインプラント治療とフラップレスインプラントの治療費用の違い

歯にかかる費用

通常のインプラント治療と比べ、フラップレスインプラント治療の方が費用が高い傾向にあります。

これは、フラップレスインプラントの手術の際に、サージカルガイドを用いるケースがあるからです。

より安全性の高いフラップレスインプラント治療を行うために、サージカルガイドの使用が推奨されています。

患者さんの口腔内の状態によっては使用できないケースもありますが、一般的にはサージカルガイドを使用して手術するケースが多いでしょう。

そのため、通常のインプラント治療費にサージカルガイド費用が加わるため、フラップレスインプラントの治療費の方がやや高額になる傾向にあります。

一般的なインプラント手術費用の300,000〜400,000円(税込)に、サージカルガイド費用の25,000〜55,000円(税込)がプラスされた費用となるでしょう。

なお、フラップレスインプラントなどのインプラント治療は自由診療ですが、医療費控除の対象となる場合が多くあります。

確定申告を行うことで治療費の一部が戻ってきますので、対象となる方はぜひ利用しましょう。

フラップレスインプラントの治療を受ける歯科医院の選び方

考える白衣女性

フラップレスインプラントの治療を受けるにあたって、歯科医院選びは非常に重要です。選び方のポイントとして、主に以下の2つが挙げられます。

  • 高度な医療設備が整っている
  • 歯科医師に豊富な経験と高い技術力が伴っている

フラップレスインプラントの治療は通常のインプラント治療と異なり、顎骨を直接目視して確認できません。そのため、CT装置などを用いて顎骨の形状や血管・神経の位置を十分に把握し、事前にシミュレーションを行う必要があります。

これらの正確で詳細な顎骨の情報を得るには、CT装置などの高度な医療設備が欠かせません。そのため、フラップレスインプラント治療を扱える歯科医院は限られています。

さらに重要となるのが、治療を行う歯科医師に豊富な経験と高い技術力が伴っているかどうかです。

顎骨を目視できないフラップインプラント治療において、歯科医師の経験や技術力が乏しい場合、顎骨穿孔や血管・神経への接触損傷といった事態を招く恐れがあるでしょう。

このように、フラップレスインプラント治療は手技の難しい術式であるため、歯科医師に求められる経験と技術力も高いものとなっているのです。

フラップレスインプラント治療を受ける際には、歯科医院のホームページなどから高度医療設備の有無を確認し、治療経験の豊富な歯科医師が在籍する歯科医院を選ぶようにするとよいでしょう。

まとめ

男性医師と看護師

フラップレスインプラントは通常のインプラント治療とは違い、歯茎に小さな穴を開けて手術を行います。そのため、手術時間が短く通院回数も少ない傾向にあります。

また、歯茎を剥離する必要がないため、腫れや痛みなどが少ない点も大きなメリットです。

治療期間を短くしたい方や、通常のインプラント治療に恐怖心がある方におすすめの治療方法といえるでしょう。

今回の記事でご紹介した、フラップレスインプラント治療を受ける歯科医院の選び方を参考に、信頼できる歯科医師のもとで治療を受けましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

山下 正勝医師(医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院)

国立大学法人 鹿児島大学歯学部卒業 / 神戸大学歯科口腔外科 勤務 / 某一般歯科 7年勤務 / 国立大学法人 山口大学医学部医学科卒業 / 名古屋徳洲会総合病院  呼吸器外科勤務 / 専門は呼吸器外科、栄養サポートチーム担当NST医師

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