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インプラントの口腔ケアにデンタルフロスは有効?種類・使い方を解説

インプラント フロス

インプラントはさまざまな理由から、歯を失った場合に行われる治療法の1つです。

人工の歯根と人工の歯(被せ物)を装着することで、入れ歯やブリッジと同様の働きをする歯科治療です。

耐久性があるインプラントですが、より長持ちさせるためには日々のセルフケアが欠かせません。

またインプラントを長持ちさせるだけでなく、口腔内の健康状態を保つために、口腔ケアは必須になります。

人工的な歯根や歯であれば歯の病気にはかからないと思われるかもしれませんが、インプラントを装着した場合でも、口腔ケアを怠ると思わぬトラブルにつながりかねないでしょう。

インプラントの口腔ケアの1つにデンタルフロスの使用が挙げられますが、デンタルフロスはインプラントにも効果を発揮するのか気になるところです。

本記事ではインプラントの口腔ケアにおいて、デンタルフロスが有効かどうかを詳しく解説するとともに、デンタルフロスの種類や使い方も紹介します。

インプラントの口腔ケアにデンタルフロスは有効?

インプラントの口腔ケアにデンタルフロスは有効?

インプラントは歯が抜けた部分の顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に人工の歯を被せる治療です。インプラントは装置を埋め込むため、入れ歯と違い取り外すことはできません。

入れ歯の場合は取り外して洗浄剤に漬けておくなどのお手入れがメインになり、歯ブラシを使用してのお手入れであっても、いったん入れ歯を外してから行うことがほとんどです。

一方インプラントは歯ブラシやそのほかのオーラルグッズを使用して、普通の歯と同様のお手入れが必要です。

インプラントは人工物とはいえ、見た目や作りは普通の歯と違いはありません。

食事をすれば、歯と歯の間に物が挟まったり食品や飲料が着色したりするので、特に食後はしっかりと歯磨きをする必要が出てきます。

普通の歯でも、磨きにくかったり汚れが溜まりやすかったりする箇所は、歯ブラシだけでなくデンタルフロスを併用することがあるでしょう。

インプラントを埋め込んだ箇所が歯ブラシで磨きにくい場合は、デンタルフロスの使用をおすすめします。

また磨きにくい箇所だけでなく、人工歯と歯茎の間は普通の歯と同様に汚れが溜まりやすいので、デンタルフロスの使用が有効です。

汚れが適切に取り除けないと歯垢や歯石が溜まってしまい、口腔内のトラブルや病気につながる恐れが出てきます。

インプラントと普通の歯が隣り合わせになっている箇所は特に注意が必要でしょう。

インプラントでもデンタルフロスを適切に使用することで、インプラントを長持ちさせるだけでなく口腔内トラブルの予防にもなります。

デンタルフロスの種類は?

デンタルフロスの種類は?

インプラントの口腔ケアにもデンタルフロスの使用は有効であることがわかりましたが、デンタルフロスはさまざまな種類があり、どれを選べばよいか迷ってしまうかもしれません。

ご自身の口腔内の状態やインプラントに合ったデンタルフロスを使用することで、ケアを適切に行うことが可能です。

ここではデンタルフロスの種類やそれぞれの特徴について解説します。

糸はワックスタイプ・アンワックスタイプがある

デンタルフロスの糸にはワックスタイプとアンワックスタイプの2種類があります。いずれも汚れを取り除く効果に大きな違いはありません。

ただし隣り合う歯やインプラントの隙間の広さによって、使いやすさに差が生じるでしょう。

ワックスタイプはデンタルフロスを使い慣れていない方や、歯と歯の隙間が狭い方に向いています。

ワックスが付いていることで歯と歯の間に糸を通す際に滑りやすくなり入れやすいので、糸が切れにくいメリットがあります。

一方アンワックスは汚れを取りやすいメリットがあるものの、糸が切れやすかったり歯と歯の間に通しにくいので、デンタルフロス初心者は注意が必要です。

形状はホルダータイプ・糸巻きタイプがある

形状はホルダータイプ・糸巻きタイプがある

デンタルフロスの形状はホルダータイプと糸巻きタイプに分けられます。

ホルダータイプはホルダーに糸が付けられているので、初めてデンタルフロスを使用する方や指にデンタルフロスを巻きつけて使用するのが難しい方におすすめです。

糸巻きタイプは糸だけの状態なので、使用しやすい長さにカットして、両手の中指に巻きつけてピンと張った状態で歯と歯の間に糸を通していきます。

使用するにはコツが必要であること、指先を器用に動かせない場合は、汚れをしっかりと取り除けないケースが起こりえるでしょう。

素材はナイロン・ポリエステル・ポリエチレンなどがある

デンタルフロスの糸は繊維1本だけでなく、繊維を束にして作られています。素材はナイロンであることが多いです。

ナイロンだけでなくポリエステルやポリエチレンが使われているものもあります。ナイロンとポリエステルで汚れの除去率を比べた際、大きな差はほとんどありません。

水分で糸が膨らむタイプもある

デンタルフロスには水分や唾液で糸が膨らむタイプがあります。

糸が太くなるので、その分汚れが付着しやすいメリットがあるものの、太くなったことで歯と歯の間が狭い方にとってはデンタルフロスを動かしにくくなってしまいます。

水分で糸が膨らむタイプについては、汚れを多く取り除ける点を重視するかデンタルフロスの動かしやすさを重視するか、ご自身の歯の隙間を考慮したうえで選択するとよいでしょう。

デンタルフロスの使い方(糸巻きタイプの場合)

デンタルフロスの使い方(糸巻きタイプの場合)
インプラントのお手入れにデンタルフロスの使用は有効です。インプラントは歯と歯茎の間の汚れが取りにくく、汚れが溜まりやすいです。

デンタルフロスは、汚れをしっかりと取り除けるだけでなく、歯ブラシよりもインプラントが傷つきにくいという点もメリットとして挙げられます。

インプラントに傷がつくと、そこからさらに汚れが溜まりやすくなるという悪循環が発生します。

そのためインプラントでは、歯ブラシだけのお手入れではケアが不十分になりやすく、デンタルフロスの併用が必須ともいえるでしょう。

先述したように、デンタルフロスには複数の形状があります。

糸巻きタイプのデンタルフロスは使い方にコツが必要です。難しくはありませんが、慣れるまで準備に時間が少しかかるかもしれません。

また糸だけのシンプルな構造なので、デンタルフロスをカットしてそのまま使っても、汚れを効率良く取り除くのは難しいかもしれません。

特にデンタルフロスに慣れていない方はフロスの持ち方に気を配るだけで、使い勝手が違ってくるでしょう。

また、フロスの入れ方や動かし方も注意深く行うことで、歯茎を傷つけなくて済みます。

ここからは、糸巻きタイプのデンタルフロスの使い方を詳しく解説します。

両手の指に巻き付ける

糸巻きタイプの持ち方は、インプラントでも天然の歯に対する使い方と同じです。

デンタルフロスを30〜40cm程度にカットし、両手の中指に巻きつけます。それぞれの指に2〜3回巻きつければ、ピンと張った状態になるでしょう。

糸がピンと張っていないと歯の汚れを適切に取り除けないので、デンタルフロスの長さの調整は重要です。

手の大きさやデンタルフロスの動かしやすさにもよりますが、目安としてはピンと張った際に15cm程度だとよいでしょう。

歯と歯の間にデンタルフロスを入れる

デンタルフロスは両手の人差し指でつまんで使用します。

歯と歯の間に入れる際にはのこぎりのように、外から内へと小きざみにゆっくりと入れることをおすすめします。一気に入れてしまうと歯茎に糸が当たり痛みが生じるでしょう。

歯と歯が密着している部分は糸を通す際に、スムーズに通らないことがほとんどです。特にインプラントは構造的にも隙間が狭くなる傾向があります。

しかし通りにくいからといって一気に入れようとしないでください。少しずつ入れていけば歯同士の密着部分を通過し、途中からスムーズに糸が通るようになります。

上下に動かしていく

デンタルフロスが歯茎に近い部分まで挿入できた状態で、歯に糸を絡ませて2〜3回上下に動かし汚れを取り除きます。

歯茎を傷つけない程度に、歯と歯茎の間まで糸を入れてください。この部分に汚れが溜まりやすく、歯垢や歯石の発生源となるからです。

天然の歯には歯根膜があり、歯根膜があると細菌に対して抵抗力がつきます。

インプラントは、金属製のネジのような支柱を埋め込みます。天然の歯にある歯根膜が、インプラントにはありません。

歯根膜があると細菌に対する抵抗力があるのですが、インプラントは歯根膜がないことで炎症が発生しやすくなります。

デンタルフロスを使用してしっかりと汚れを取り除くことが、炎症の発生を防ぎます。

歯茎を痛めないように、デンタルフロスをゆっくりと上下に動かしながら、着実に汚れを取っていきましょう。

歯の片側の汚れを取り除いた後は、もう片側も同様の手順で行いましょう。

横に動かしながら外す

デンタルフロスを外す際にも注意深く取り扱うとよいでしょう。

汚れを十分取り除いた後、糸を横に小きざみに動かしながら、ゆっくりとデンタルフロスを外していきます。

デンタルフロスを挿入する際と同様に少しずつ動かしていくと、外しやすいでしょう。

万が一スムーズに外せない場合は、片側の指に巻きつけていた糸を外し、外側に引き抜くようにしてみてください。

インプラントのケアを怠った場合のリスクは?

インプラントのケアを怠った場合のリスクは?

インプラントは人工物なので、普通の歯と比べるとトラブルが起きにくいと思われるかもしれません。

実際インプラントはむし歯が発生しませんが、インプラントのケアを怠ったことで、普通の歯がむし歯になるリスクがあります。またさまざまな口腔トラブルが発生する確率が高くなりやすいです。

ここではインプラントのケアを怠った場合のリスクを具体的に紹介します。

インプラント周囲炎を発症しやすくなる

インプラントのケア不足で発生しやすい症状が周囲炎です。

周囲炎はインプラントのケアを怠ったことによって、歯茎や周辺組織に汚れが付着し、そこから炎症が発生し、悪化すると歯槽骨が溶け出す恐れがあります。

周囲炎は、普通の歯に置き換えた場合の歯周炎に相当する症状です。

周囲炎にかかってしまうと、歯茎の炎症・腫れ・出血・膿などが症状の進行に合わせて現れます。

インプラントは汚れが溜まりやすい装置です。むし歯になりにくいからといってケアを怠ると、汚れが溜まり衛生状態が悪くなり、周囲炎の発症につながります。

口臭の原因となる

インプラントが人工物でむし歯にもかかりにくいからといって、ケアを怠ると口腔内の衛生環境は悪くなります。

口腔内が不衛生で発生するトラブルの1つに口臭が挙げられます。口臭は歯磨きや口腔内ケアが不十分なことにより、汚れが残っている状態で発生しやすいです。

インプラントは汚れが溜まりやすい装置なので、しっかりとケアを行わないと口臭の発生にもつながるので注意しましょう。

インプラントの寿命が短くなる可能性も

インプラントの寿命が短くなる可能性も

インプラントは人工物だからといって、永久に使えるわけではありません。少しでも長く使用するのであれば、インプラントを埋め込んだ後のケアは欠かせないでしょう。

ご自身で行えるケアで挙げられるのが、歯磨きを始めとする口腔ケアです。

歯磨きや口腔ケアが適切に行われないと、周囲炎を始めとする口腔内トラブルを引き起こし、悪化するとインプラントを撤去する恐れも出てきます。

インプラントの寿命を短くさせないで使用するためには、日々のケアと定期検診を受けることをおすすめします。

デンタルフロス使用時の注意点は?

デンタルフロス使用時の注意点は?

インプラント装着後は、口腔内の衛生状態を保ちインプラントを長持ちさせるためにも、普通の歯と同様のお手入れが欠かせません。

口腔ケアを行う際のアイテムはさまざまなものが揃っていますが、そのなかでもデンタルフロスの使用はインプラント装着時の口腔ケアに適しているでしょう。

デンタルフロスは簡単に取り入れられる口腔ケアアイテムですが、使用時に注意する点があります。ここからはその注意点を説明します。

間違った使い方をすると歯茎から出血することがある

まず、デンタルフロスの正しい使い方を知ることです。間違った使い方をすると歯茎を痛めたり傷つけたりしてしまい、歯茎の炎症を引き起こす原因にもつながります。

また、歯茎の炎症に加えて、出血することもあるでしょう。

歯茎を傷つけてしまうと、そこから思わぬトラブルが引き起こされる恐れがあります。

トラブルを防ぎインプラントを長持ちさせるためには、歯茎が良好な状態であるかどうかが重要です。

インプラントは装置の周囲に、汚れや歯垢が溜まりやすい特徴があります。

特に、歯とインプラントの間やインプラント同士の間は隙間が狭くなるケースもあり、デンタルフロスで念入りに取り除くことが重要です。

その際に注意すべき点があります。

隙間が狭いからといって無理矢理デンタルフロスを入れると、勢いがついてしまいデンタルフロスで歯茎を傷つける可能性が高くなりやすいです。

歯茎が傷つくと、歯茎が痩せ細る原因にもつながります。歯茎の健康は、インプラントの土台を支えている歯槽骨にも影響を及ぼします。

歯茎の状態が悪化すると、インプラントがグラグラしたり抜け落ちてしまったりする恐れがあるでしょう。

そのため、デンタルフロスの間違った使用方法で無用に歯茎を傷つけることは避けてください。

デンタルフロスの使い方は歯科医院で直接指導を受けることをおすすめしますが、難しい場合は本記事で紹介した使い方を参考にしてみてください。

一度使ったデンタルフロスは再利用しないように注意

一度使ったデンタルフロスは再利用しないように注意

デンタルフロスで歯の汚れを取り除き、別の歯の汚れを取る際には、フロスの場所をずらし新しい部分で汚れを取り除くようにしてください。

一度使用したフロスには当然汚れが付着しています。違う歯に使用してしまうと、きれいにするどころか汚れをつけてしまうことになるでしょう。

インプラントが人工物であるから、汚れが多少付着していても問題がないだろうと考えるかもしれません。

インプラント自体は人工物であっても、それを支えている歯茎にとって、汚れは悪影響を及ぼします。

インプラントを長持ちさせるためには、歯茎を健康に保つことがポイントになります。

糸の繊維が毛羽立っていないからまだ使えるだろうと思わずに、再利用しないように注意しましょう。

清潔なデンタルフロスでお手入れすることが重要です。

インプラントのケアを歯科医院で定期的に受けることも大事

インプラントのケアを歯科医院で定期的に受けることも大事

インプラントを装着した後は日々のケアが必須となります。しかしいくらご自身でケアを丁寧に行っていても、不十分な箇所が出てくるでしょう。

またインプラントは適切なメンテナンスを受けることで、より長持ちするケースが多いとされています。

セルフケアは必須であるものの、それだけでは不十分な場合もあるでしょう。インプラント装着後は、歯科医院で定期的に検診を受けることをおすすめします。

インプラント装着後に歯科医院では主に次のような点をチェックします。

  • 周辺の骨や歯茎の状態
  • 被せた歯の状態
  • 噛み合わせ
  • 歯磨きが適切に行えているかの確認

いずれもインプラントを長持ちさせ、口腔内環境を整えるためには重要な点です。

またケア不足によって周囲炎が引き起こされている場合、初期症状は気がつきにくく、症状が悪化してから気がつくケースが見受けられます。

定期検診とあわせて歯科医院でのケアを受けることで、トラブルの早期発見が可能になるだけでなく、日ごろ見落としがちな箇所をケアしてもらえます。

まとめ

まとめ

インプラントは人工的な歯根や歯であることから、日々のケアが十分に行えなくても、口腔内のトラブルは起こらないだろうと誤解されることがあります。

しかし、インプラントは日々のケアを怠ると口腔内の環境は悪化し、思わぬ病気を引き起こしかねません。

普通の歯よりも入念なケアが必要とされるインプラントは、歯ブラシのみのケアでは汚れが十分に落とせない傾向が出やすいです。

インプラントの口腔ケアにデンタルフロスを取り入れることで、歯やインプラントに付着する汚れは簡単に取り除け、口腔内を衛生的に保てます。

デンタルフロスを日々のお手入れにぜひ取り入れてみてください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坪光 玄義歯科医師(地挽歯科医院)

坪光 玄義歯科医師(地挽歯科医院)

鶴見大学歯学部 卒業 / 平成24年歯科医師免許証 取得 / 現在は地挽歯科医院、蕨にしき町歯科・口腔外科(いずれも非常勤)

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鶴見大学歯学部 卒業 / 平成24年歯科医師免許証 取得 / 現在は地挽歯科医院、蕨にしき町歯科・口腔外科(いずれも非常勤)

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