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1〜2本なら問題ない?!先天性欠如歯を放置することのデメリットと治療方法

1〜2本なら問題ない?!先天性欠如歯を放置することのデメリットと治療方法

先天性欠如歯は1〜2本なら放置しても問題ないのではと思う方もいるかもしれません。しかし、先天性欠如歯は本数に関係なく、放置していると多くのデメリットがあります。先天性欠如歯の治療方法にはいくつか種類があるため、歯科医師の診断のもと症状や希望に応じて適切なものを選択することが大切です。今回は、先天性欠如歯を放置することのデメリットや治療方法、かかる費用について解説します。先天性欠如歯で悩んでいる方や治療方法について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

先天性欠如歯とは

先天性欠如歯とは

先天性欠如歯とは、生まれつき歯の本数が少ない状態のことをいいます。本来、歯は乳歯が20本、永久歯は親知らずを含めると32本が通常です。乳歯の本数が少ない、乳歯が抜けない、乳歯が抜けたのに永久歯が生えてこないという場合には先天性欠如歯の可能性が考えられます。

先天性欠如歯の概要

先天性欠如歯は、何らかの先天的な原因で起こる歯の形成異常のひとつです。先天性欠如歯は、乳歯にも永久歯にも発生しますが、特に、乳歯が抜けた後に生えるべき永久歯が存在していないケースの頻度が高いです。そのため、6歳前後で乳歯が生え変わる時期に異変に気が付きやすくなります。

先天性欠如歯が発生しやすい場所

先天性欠如歯は、上顎より下顎で発生しやすいです。また、側切歯(前歯から2番目の歯)や第二小臼歯(前歯から5番目の歯)に発生しやすいことがわかっています。

先天性欠如歯の発生率

日本小児歯科学会の調査 によると、小児の永久歯における先天性欠如歯の発生率は10%を超えることが報告されています。10人に1人の割合と考えると、先天性欠如歯の発生確率は決して少なくないことがわかるのではないでしょうか。

先天性欠如歯の原因

先天性欠如歯の原因は解明されていません。遺伝的要因や栄養不足、薬の副作用など、歯が形成される胎児の段階で発生した何らかの要因により、歯胚(しはい)と呼ばれる歯のもとになる組織が生成されなくなることが原因と考えられています。ただし、いずれの説も先天性欠如歯とのはっきりとした関連性は認められていないため、先天性欠如歯を事前に予防することは難しいのが現状です。

先天性欠如歯の診断方法

先天性欠如歯は、レントゲン撮影をして歯茎のなかにある永久歯の本数を確認することで診断できます。レントゲンを撮るだけで、痛みもなくすぐに診断できるため、乳歯がなかなか抜けない、乳歯が抜けた後に永久歯が生えてこないなど、気になる症状があるときにはなるべく早く歯科医を受診しましょう。

1~2本の先天性欠如歯は問題ないのか

1~2本の先天性欠如歯は問題ないのか

1〜2本の先天性欠如歯は放置していても問題ないのでしょうか? 結論としては、先天性欠如歯がある場合、本数に関わらず受診が必要です。ここからは、受診が必要な理由と治療について説明します。

先天性欠如歯は1~2本、それ以上の場合も

先天性欠如歯は、通常より1〜2本歯が不足していることが一般的なのですが、なかにはそれ以上の本数が欠如するケースもあります。多くの歯が欠如している場合は染色体や遺伝子の異常が疑われる場合もあり、専門的な検査が必要です。

本数が少なくても受診が必要

先天性欠如歯が1〜2本程度の場合は放置してもよいのではと考える方もいるかもしれません。しかし、欠如している歯が1本であったとしても、歯と歯の間に隙間があると両脇の歯が少しずつ倒れてきて歯並びの悪化を引き起こします。歯並びが悪いと噛み合わせに大きな影響を及ぼし、歯を失うリスクも高まります。また、噛み合わせの不具合は全身の不調を引き起こす可能性もあるため、先天性欠損歯がある場合は、本数の多い少ないに関係なく受診が必要です。

欠如歯の本数が多いと全体的な治療が必要

先天性欠如歯が1〜2本であれば、場所によっては前歯だけなどの部分矯正で治療が完了することもあります。しかし、欠如している歯の本数が多いと、噛み合わせを整えたり歯と歯の間の大きな隙間を埋めたりする必要があるため、全体的な治療を行うケースが少なくありません。

先天性欠如歯を放置することのデメリット

先天性欠如歯を放置することのデメリット

先天性欠如歯は欠如している歯が多い場合はもちろんですが、たとえ1〜2本であったとしても放置していると多くのデメリットが発生します。ここでは先天性欠如歯を放置することで起こる4つのデメリットについて解説します。

むし歯や歯周病のリスクが高まる

先天性欠如歯があると歯と歯の間に余計な隙間が発生し汚れがたまりやすくなります。隙間があるだけであれば歯間ブラシなどでケアできると思うかもしれません。しかし、先天性欠如歯を放置して歯並びが悪くなると、歯磨き方法など歯のケアが十分にできず、歯の汚れや歯垢(しこう)が蓄積されてしまいます。また、歯並びの悪化により口呼吸になると口腔内が乾燥し、むし歯や歯周病菌が増殖しやすくなることにも注意が必要です。

噛み合わせが悪くなる

先天性欠如歯があると噛み合わせが悪くなります。たとえ、欠如している歯が1〜2本であったとしても、上下の歯が噛み合わないと食事が困難になったりほかの歯に負担がかかったりしてしまいます。顎関節症を発症したり、発音や活舌に支障をきたしたりする可能性もあるでしょう。また、噛み合わせが悪いと顎や首の筋肉に余計な力が入り、肩こりや頭痛の原因になることもあります。お口まわりの問題だけでなく全身に悪影響を及ぼす可能性があるため、先天性欠如歯がある場合は本数に関わらず適切な治療を受けることが大切です。

見た目が気になる

先天性欠如歯があると歯並びがガタガタになったり、すきっ歯になったりするため見た目が悪く、コンプレックスを抱えてしまう方もいるでしょう。歯と歯の隙間がある状態を長く放置していると歯が少しずつ移動して歯並びが余計に悪化してしまいます。上下左右の歯の本数が揃っていない状態が続くと、顎の成長にも影響を与え、顔貌の変形にもつながります。歯並びが悪化してからの治療は治療期間が長く、費用も高額になってしまうため早期に治療を行うことが重要です。

歯が抜け落ちる原因になる

先天性欠如歯によって噛み合わせや歯並びが悪い状態を放置していると、むし歯や歯周病により歯が抜け落ちるリスクが高まります。また、歯の噛み合わせが悪いと、一部の歯に過剰な力がかかり、歯が欠けたり抜けたりすることもあるでしょう。

先天性欠如歯の早期発見のために

先天性欠如歯の早期発見のために

先天性欠如歯は歯科検診などで指摘されるまで、保護者や本人でも気が付かないケースが少なくありません。先天性欠如歯の治療法にはいくつかの種類がありますが、発見が遅れると治療に適した時期を逃してしまう可能性があります。そのため、先天性欠如歯は早期発見し、適切なタイミングで治療を開始することが大切です。

かかりつけ歯科医院を作る

先天性欠如歯は本人ですら気が付きにくいため、かかりつけの歯科医院を作って定期的に検診に行くようにしましょう。歯科医院でレントゲン撮影を行い、永久歯の状態や生え変わりのタイミングを確認することで、先天性欠如歯がある場合にも早期発見、早期治療ができます。

癒合歯がないかチェック

乳歯が癒合歯(2本以上の歯が1本につながっている歯)の場合、先天性欠如歯の発生確率が高くなります。癒合歯の下に永久歯が2本存在していれば問題はありませんが、1本しかない、あるいは永久歯が存在していない場合があります。乳歯に癒合歯がある場合は歯科医院を受診し、レントゲン撮影を行い永久歯の状態を調べるようにしましょう。

両親の歯もチェック

両親のどちらかが先天性欠如歯の場合、子どもにも遺伝する可能性があります。先天性欠如歯は乳歯が抜けてから時間が経つと、歯並びの悪化などにより治療がしにくくなることもあります。遺伝による先天性欠如歯の可能性が考えられるときには、一度受診して検査してもらうのがおすすめです。乳歯が抜ける前に先天性欠如歯であることがわかれば、治療の方針が立てやすくなるでしょう。

先天性欠如歯の治療方法

先天性欠如歯の治療にはいくつか方法があり、歯の状態やご本人の希望に沿って適切な治療法を選ぶ必要があります。先天性欠如歯の治療方法について順番にご紹介します。

乳歯の場合

通常、乳歯は永久歯に生え変わるときに、歯の根が溶けて短くなる歯根吸収(しこんきゅうしゅう)と呼ばれる現象が起きます。歯根吸収が起きると乳歯が抜け落ちるのですが、先天性欠如歯の場合、永久歯が存在しないので歯根吸収が起きず乳歯がそのまま残ります。そのため、乳歯を数十年間残すために大切にケアすることも治療のひとつです。しかし、乳歯は永久歯と比べて歯質が弱くむし歯になりやすいため、定期的な歯科検診や適切な口腔ケアが欠かせません。また、乳歯は歯根が短いためいずれは歯が抜けてしまう可能性が高いことには注意しましょう。乳歯が抜けた後には、以下でご紹介する歯を補う治療を行う必要があります。

歯列矯正治療

先天性欠損歯がある場合、歯と歯の間に隙間が生じます。その隙間を埋める目的で行うのが歯列矯正治療です。歯を大きく動かす必要がある場合にはワイヤー矯正を、少しの隙間を埋めたい場合にはマウスピース型矯正を行います。歯列矯正治療は基本的には保険適用外のため費用は高額です。ただし、先天性欠損歯の本数が少なく、前歯だけを動かす部分矯正で済む場合は費用を抑えることもできます。

入れ歯を使用する

不足している歯を補うには部分入れ歯を使用する方法もあります。部分入れ歯は取り外しができるので清掃がしやすいのが利点ですが、噛むときに違和感を覚え、噛む力が低下する可能性があることがデメリットです。部分入れ歯には、金具で固定するタイプと、ノンクラスプデンチャーというプラスチック製の土台を歯茎に固定するタイプの2種類があります。ノンクラスプデンチャーは、金属を使用しないため金属アレルギーの心配がないことや、装着による違和感が少ないこと、金属が見えないので審美性に優れていることがメリットです。手軽に歯を補えるため、ほかの治療法を検討するまでの処置として部分入れ歯を使用する場合もあります。

ブリッジ

ブリッジは、歯のない部分の左右の歯を土台として橋を架けるように被せ物を装着する治療方法です。欠損している部分の左右の歯を削るため、健康な歯に負担がかかる点はデメリットです。しかし、義歯をしっかり固定できるので自分の歯のような自然な見た目と噛み心地を得ることができる点がメリットです。

インプラント手術

インプラント手術は、歯が欠損している部分にインプラントと呼ばれるチタンでできた人工歯根を埋め込み上部構造を被せる治療方法です。丈夫で長持ちすること、自分の歯と同じように噛めること、審美性に優れ、自然な見た目を保てることなどがメリットです。しかし、人工歯根を顎の骨に固定する手術が必要になるため、顎の成長が止まるおおむね20歳以降になってからでないと手術はできない点に注意が必要です。

先天性欠如歯の治療費用の相場

先天性欠如歯の治療費用の相場

歯列矯正治療やインプラント治療などは一般的には保険適用外の治療であるため、費用が高額になる点がデメリットです。しかし、先天性欠損歯の場合、条件を満たしていれば保険適用となる可能性があります。ここからは、先天性欠損歯の治療費用の相場について解説します。

保険適用外の場合

歯列矯正とインプラント治療は基本的には保険適用外となり、費用も高額です。全体矯正の場合、ワイヤー矯正は60〜150万円、マウスピース型矯正は60〜100万円程度の費用がかかります。前歯だけなど部分矯正の場合はワイヤー矯正で30〜70万円、マウスピース型矯正で10〜40万円程度です。インプラント治療の場合は1本20〜40万円程度の費用がかかります。多くの欠損歯がある場合、すべてをインプラントで治療しようとすると費用がとても高くなってしまいます。欠損歯の本数と費用を考慮して適切な治療法を選びましょう。

保険適用の場合

ほとんどの場合、入れ歯やブリッジは保険適用での治療ができます。費用は、保険診療の3割負担の場合、部分入れ歯は5,000円〜15,000円程度、ブリッジは1本あたり1〜2万円程度が相場です。原則保険適用外の歯列矯正とインプラント治療ですが、先天性欠損歯が6本以上ある、または先天性欠損歯が4本あるいは5本連続しているという条件を満たしている場合には、保険適用での治療が受けられます。保険適用であれば、原則3割負担で治療が可能となり、費用負担を大きく減らすことができます。治療する病院や治療方法によって金額は変わるため、トータルの費用はカウンセリング時に確認するようにしましょう。

まとめ

先天性欠如歯を放置するデメリットや治療方法、費用について解説しました。先天性欠如歯は、1〜2本だからといって放置をしてはいけません。見た目だけでなく噛み合わせが悪化したり、むし歯や歯周病で歯が抜け落ちたりするリスクが高まってしまいます。先天性欠如歯の治療にはいくつか種類があるため、欠如している歯の本数や歯の状態に応じて適切な治療を行うことが大切です。状態によっては保険適用での治療も可能ですので、気になる症状がある場合は早めに歯科医を受診し、適切な時期に治療を開始しましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
菱川 敏光医師(ひしかわ歯科院長)

菱川 敏光医師(ひしかわ歯科院長)

長崎大学歯学部卒業 愛知学院大学大学院歯学研究科修了 愛知学院大学歯学部歯周病学講座講師(2020年3月まで) 愛知学院大学歯学部歯周病学講座非常勤講師 ひしかわ歯科 院長

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長崎大学歯学部卒業 愛知学院大学大学院歯学研究科修了 愛知学院大学歯学部歯周病学講座講師(2020年3月まで) 愛知学院大学歯学部歯周病学講座非常勤講師 ひしかわ歯科 院長

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